♠43回「政治家と政党」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

政党がなければ話にならない

日本(だけではないが)の政治では政党が果たす役割が大きい。議会における多数決に勝利するためには、近い意見の人が集まって大きなグループを作らなければならないからだ。さらに総理大臣も最大グループ(いわゆる与党)から選ばれる。
野党も国会の議論の中で与党の意見の問題点をついて政策を修正させ、人気を得て次の選挙で勝って与党を目指すという流れの中で、より良い政治を実現する重要な役割があるものの、その存在感では与党にはかなわない。
無所属で出馬して選挙で選ばれてからどこかの党に所属する(あるいは別の党に移籍する)ケースもあるが、多くの候補者は先に政党に所属している。元から党員であったり(実は議員でなくても政党に所属して党員になることはできる!)、その党の議員の後継者や秘書だったり、政党が「うちから出たい人いませんか」と公募するのに応募して選ばれた人だったりするようだ。
党に所属していれば「○○党の誰それです」と叫んで選挙戦に突入していくことになる。多くの投票者は個人の主張よりも「どこの党に所属しているか」で選ぶし、「比例選挙」方式では個人あるいは党に投票してその票に応じて当選者が決まるし、政党交付金からの金銭援助も得られる……これだけ聞いてもその有利さはわかるだろう。また、その政党にとって特に重要な候補であれば、TVでよく姿を見るような有名議員が次々と応援にやってきて、「彼をよろしくお願いします!」と頭を下げる。この効果は大きい。
それだけではない。選挙には非常に細かいルールがあって、「お茶を出すだけで買収」とか「ボランティアにお金を払うと買収」とか思いもよらぬところで足をすくわれることがありうる。このような問題について、選挙経験豊富な政党からのアドバイスがもらえるのは心強いはずだ。

選挙に勝ちはしたけれど

とはいえ、こうして無事当選したとしても、国会においては数百分の一の存在でしかないのが実際のところだ。政治を直接的に動かしたければ、最低でもそれなりの人数のいる党で重要な存在にならなければらない。大臣や幹事長(党のトップ)になりたければ当選回数も重要だ。何度も選挙に勝つのも簡単なことではなく、「負ければただの人」だ。政治家として国を動かすのは非常に難しいことと言える……。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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