世の中を変える!
「世の中を変えたい!」何かしらの動機をもとにこのように強く願うキャラクターは、主人公としても、ヒロインとしても、そして何よりもライバルや黒幕として非常に便利な存在だ。彼が世の中を変えようとすれば当然のこととして既存勢力(そこには平凡な日常を過ごす一般庶民を含む)からの強い反発が予想され、大きな事件が巻き起こることは必定であるからだ。
では、そのキャラクターが世の中のあり方や仕組みを変えたいと思ったならば、どんな方法があるだろうか。
知名度・発言力という力
なんらかの習慣やモラルの問題であれば、世間的な知名度、発言力、影響力さえあれば実現できる可能性がある。たとえば酒やタバコや何かの食品のような日常化している物事を辞めさせたり、会釈に変わる挨拶を流行らせたり……というようなことだ。
具体的にはどうするか。現代は高度情報社会であるし、私たちはテレビのニュースやインターネットのSNS、あるいは「ドラマで格好良く描かれること、格好悪く描かれること」に驚くほど影響される。
そのため、非常に人気があり発言力のある有名人がテレビなどで口にするポリシーは、単に彼や彼女のファンを動かすだけでなく、さほど思入れがない人にさえ影響を与える可能性がある。
別に有名人でなくとも、テレビ番組やCMを多数手がける広告代理店マンや、SNSのアルファ(多数のフォロワーを持つ人)、あるいは「SNSのアカウントを金で買って多数持っている人」には同種のことができるかもしれない。
ただ、このようなやり方で変えられるのは人々の生活に関わる物事がほとんどで、国家としての方針や法律にまで手をつけるのはかなり厳しいといわざるを得ない。現代国家のシステムは、そのような重大な問題が人々の熱狂によってたやすく変えられないよう幾重にもセーフティがかかっているからだ。もちろん、庶民の熱狂は民主主義システムにのって政治にも影響を与えるが、直接的に変えるのは難しい。
国のあり方を直接的に変えたければ、これを動かす国家・政府・役所の一員になるしかない……というわけで、次回はこの辺の話をしたい。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。