マスコミで紹介されたりネットで人気が出たりして、特定の飲食店にお客さんが集中したとします。
商売繁盛で喜ばしいことのように思えますよね。
実はこれ、飲食店にとって必ずしも幸せな事態とは限らないのです。
飲食店によって経営の仕方は様々です。
料理とドリンクでバランスを取って経営している店もあれば、
料理だけ・ドリンクだけで経営が成り立つようにしている店もあります。
また、ゆったりとした接客を売りにしている店もあります。
マスコミやネットで特定のメニューに人気が集中した場合、そのお店が成り立たなくなることになるかもしれません。
飲食店にとってドリンクは売上のキモです。
なのでドリンクは注文してほしいのですが(ワンドリンク制のお店も少なくないと思います)、特定のメニューが目的の場合はドリンクは注文しないこともあるでしょう。
そうなると利益が出なくなってしまうのです。
そもそも、お店のキャパを超えてお客さんが来たことで十分な接客ができず、お客さんに不満な気持ちを与えてしまうかもしれません。
また、今まで大事にしていた常連客を失うかもしれません。
飲食店に限らず「今は混んでるから行かないでおこう」となった覚えがある人も少なくないと思います。
さらに、人気になって勘違いすると、接客や料理のレベルが落ちてしまうかもしれません。
悲しいことですが、今までそういうお店を何軒も見てきました。
マスコミやネットの力で一躍人気になることが答えではないんですね。
ほどほどの成功、並びに一瞬の人気でもそこで調子に乗らないことが長く飲食店を続けていく上で大事なのだと思います。
当然この話は、小説の世界でも言えて、
「自分の作品を待っている読者がいる」と思いこむと、
「自分が書いたら何でも売れる」と勘違いしてしまいます。
というように、別業種の話も他山の石として勉強になるので、成功や失敗のエピソードはたくさん収集したいものです。
榎本秋
榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。