♠39回「山の中でするべき行動」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

沢に降りるな!

もしあなたのキャラクターが本当に山のプロフェッショナルなら、前回あげたような常識的な対応を超えたところでの行動ができるのかもしれない。広大な山のあちこちを記憶し、太陽や他の山々の風景から位置を把握し、獣道を通る……そのようなプロもいるかも知れない。だが、彼らも必要がなければ無理はしないだろう。それだけ山という場所は危険なのだ。
そのような人たちが常識として知っていることに「沢(川)に降りるな、峰や尾根に上がれ」というような教えがあるという。とにかく山を降りたいから下がっていけば沢に当たることはよくあるし、木も少ないから歩きやすい。しかし、沢がそのまま麓につながっていることは少なく、崖だったり堤防だったりで道が断たれていることが多いのだ。
では、なぜ「上がれ」なのか。これは視界がひらけることで現在位置を確認できるし、峰や尾根はしばしば登山道が通っている。結果として正しいルートに復帰できる、というわけだ。

自主下山か救助依頼か

……では。本当に遭難してしまったら、どうすればいいのか。
まずはビバーク、つまり山中で野宿するための拠点を見つけることだ。夜に山の中で行動していいことはなにもない。昼には見えていた危険な場所にうっかり足を踏み込んでしまった結果、足元が崩れたりはまり込んだり怪我したり、という可能性が十分ある。体力の温存もはからなければならない。
では一夜をどうにか明かせたとして、そこからどうするか。体力に余裕がある、あるいは天候が許すのであれば、自力で下山を試みるべきだろう。自主登山というのが山の原則としてあるからだ。
しかし、その原則は人の命を超えるものではない。下山不可能であれば速やかに救助依頼を出し、ヘリであるとか救出隊であるとかが見つけやすいところで待機し、救助を待つべきであろう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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