人材供給のための学校
前回紹介したのは、主に特別な知識や技術を習得するための専門学校とその同種の存在であったが、実はもっと特殊な、特別な立ち位置の学校がまだまだある。
たとえば、特定の職業や企業と深く結びつき、そこに人材を供給するための学校だ。
一例として、競馬、競輪、競艇、オートレースという公営ギャンブルにはそれぞれ選手を育成するための養成場があって、しばしば「学校」の名前で呼ばれる(ただ混同に問題があると見られるのか、競艇のやまと学校が2017年に「ボートレーサー養成所」と改名されるなどの動きはある)。これらの学校では時に負傷者・死者も出かねない危険な競技に挑む選手を育成するため、厳しい集団生活、また在学中から激しく競い合わせるなどの独特のカリキュラムを組んでいる。
ほかにも警察学校では警察官を養成するし、自衛隊にも防衛大学校など自衛隊育成のための学校がある。面白いところでは、トヨタ工業学園というあのトヨタの社員育成のための学校まである。
特殊な世界設定との結びつき
もし、あなたの作る世界に特別な職業がある場合、何らかの形でその職業のための学校がある確率は高い。学校による育成抜きに高度な人材を確保するのは難しいし、また「こういう職業につきたい!」という希望があれば教育業界として「そのための教育を提供します!」と手が挙がるのは当然だからだ……ただ、その実態が必ず伴うとは限らないのが商売というものだが。
たとえば、超能力が普及し始めた時代に、能力開発を謳った学校を立ち上げたものの、内実が伴わずドタバタが……などとなったら面白いかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。