♠36回「ミュージシャンの生き様」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

プロへの道

ミュージシャン(音楽家)、特に現代ポピュラーミュージックの演奏家・作曲家たちは芸能の世界のスターといえよう。優れた音楽、時代に求められる音楽というものは人の心を動かし、人生を変える力がある。そして莫大なソフトやコンサートチケットが動くことによって、絶大な富を生む。それを生み出すのはミュージシャンの技であり、センスなのだから、これをもって有名人になろう、というのは安易だが王道と言えよう。
では、どのようにすれば有名な(プロの)ミュージシャンになれるのか。
音楽の世界は先に紹介した「芸」の世界と違って弟子入り制度も学校制度もあまり見当たらないが、その代わりにインディーズ、つまりアマチュアが趣味兼半ば職業として活動する舞台が整っていた。全国各地にライブハウスがあり、あるいはストリートミュージシャンの文化もあって、そこではプロだけでなくアマチュアも音楽活動を行うことができる。このインディーズの世界で人気を高め、ファンを獲得していれば、やがて音楽事務所が自然と注目し、スカウトがやってきて、プロとしての契約を結ぶ日も来るだろう。
音楽事務所が注目しなかったとしても、自分から売り込んでいく道筋もある。自分たちの作った音楽やライブの様子などを録ったソフト、あるいはYou Tubeの動画アドレスなどをこちらから送りつけるわけだ。そのような「売り込み」は昔からずっとさまざまな形で行われていて、事務所側もなれている。多くの売り込みは箸にも棒にもかからないものばかりだが、売り込みを受け付けている事務所は僅かな希望にかけて大量の「石」の中から「玉」をよりわけんとするわけだ。

「売れる」ために何を取るのか

ミュージシャンの場合、しばしばあるのがメジャーデビューにあたっての路線変更や再編である。事務所側としては売るためにスカウトするわけだから、「才能はあるが売れなさそうな路線を歩んでいる」となれば矯正を試みるのは当たり前である。
結果、インディーズ時代とは方針・演出が変わったり、メンバーが変わったり、ということがよく見られる。それがいい思い出に変わることもあれば、恨みや対立、事件を生むこともある。メンバー間の確執、事務所への敵意、そしていつか見返してやろうという思いを熟成してしまうこともあるだろう……。このあたり、有名になるために必要なイニシエーションともいえ、物語の種として面白いところだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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