第35回「大学」

榎本海月の連載

それまでとは違う場所

小学校、中学校、高校と紹介してきて最後はもちろん大学だ。ストレートに進学してきたら19歳から23歳までをここで過ごすことになる。
ただ、それまでの学校と大学は少なからず性質が違う。同じく義務教育ではない高校と比べてもまた違う。大学はまず教育機関であると同時に研究機関なのである。大学生たちはここで学びながら研究するということが(実態はともかくとして)建前になっている。卒業時に論文を書くのも、そのためだ。
授業内容も当然違う。幅広く様々な分野について学ぶ(単純に知識を身につけるだけでなく、そのような学習の中でものの学び方、興味の持ち方などを養っていたわけだが)中学高校に対し、大学はまず第一に自分たちの専門分野、学部・学科で掲げている内容を学んでいく。ただ、視野が狭まるのはよくないため一般教養として多様な分野も学ぶのだが、近年はより専門性を強める傾向があるようだ。
授業の受け方も違う。高校まであったようなクラス制は一般に見られず、生徒たちは自分の状況と目的に合わせて受講する講義を選ぶ。3年あたりからゼミに所属してさらに研究を深めたりはするが、これもクラス性のような面倒を見るシステムではない。あくまで各個人が自分の意思で学ぶというのが大学のあり方だ。

遊んで暮らしてもいいけれど

こうなると、大学に通う意義を学問以外にも見出す人が相当増えてくる。授業はそこそこにして、サークル・クラブ活動に精を出したり、ひたすらアルバイトにふけったり、合コンやナンパ三昧の日々を送ったり……一昔前だと「ひたすら麻雀をやっていた」などという話も聞いたかもしれない。
大学のシステム上は、そんな彼らであっても単位取得のための出席やテストでの成績などを満たせば問題はない(替玉出席やカンニング、あるいは講師による出席確認が雑などあったら問題だが!)。そうして就職までの4年間をモラトリアム的に楽しむというのも、大学生の一つのあり方ではあろう。
しかし、せっかく大学まで行ってそれでいいのか、というのもまた一つのあり方だ。なにしろ大学というのは高度な勉強をするのにこれ以上ない空間である。教えてくれる人、学ぶべき書物が大学のキャンバスの中に詰まっている。この時間と空間を生かすためには遊んでいる暇などない、かといってぼーっとしていて誰かが教えてくれるわけでもない。だから好奇心を持って学問に取り組み、自分からテーマを見出すべく行動する……それが大学生に本来求められるあり方なのだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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