♠34回「芸人はかつて弟子入りするのが当たり前だったが……」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

有名になりたいと言うけれど

「有名になりたい」は手段としても、目的としても、物語の中に頻出する要素の一つだ。そのキャラクターはただただ有名になって世間の称賛や莫大な報酬を得たいのかもしれない。あるいは、「生き別れの家族に会いたい」などの理由で有名人になりたいのかもしれない。
さて、それではどうすれば有名人になれるのか。その道筋は多種多様にある(大ヒット小説家になる、というのもその一つだ!)が、ここから数回は「芸能人として有名になる」を中心に紹介したい。

芸人への道

芸能人と一口に言ってもその中身はやっぱりいろいろだが、まずは「芸人」、つまりなんらかの芸を披露して報酬を得る人たちについて見てみよう。
伝統的に芸人になるには「師匠に弟子入りをする」という手順を踏んだ。いわゆる職人の徒弟制度の一種である。師匠は弟子に芸の技を教える代わりに、各種の雑用をさせる。芸は直接教えてもらえないこともあるが、師匠と生活を共にする中で見て覚えることができる。給料は払われても小遣い程度であることが多いが、その代わりに衣食住が提供される……これは多くの徒弟制度で見られるものだ。つまり、芸人は職人の一種だったわけである。
ただ、今もなお芸人の世界に広くこのシステムが残っているかと言えば、そうではない。落語に代表される伝統芸能の世界はともかく、現代主にテレビをこそ主戦場とする「芸人」と言われる人たち、いわゆる「お笑い芸人」たちはいま基本的に古典的弟子入りをする人たちはほとんどいないとされる。元々は弟子入りをするものだったが、すっかり廃れたのだ。
理由はいろいろあるようだが、おそらくその第一は「弟子入りのメリットがほとんどない」からではないか。古典的伝統芸能においては様々な演目があり、受け継がれる名跡(特別な名前)がある。しかし、現代の漫才、コント、そして何よりもTVにおけるタレント芸にこれらの継承できる要素はほとんどない。彼らは新しい自分だけの芸を身につけねばならず、そうなると弟子入りのメリットが非常に小さくなってしまうのだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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