第32回「小学校」

榎本海月の連載

集団生活を学ぶために

小学校は概ね6歳から12歳の少年少女が通う、義務教育の最初の6年間を過ごす場所だ。
ここでは学問・知識を学ぶのはもちろんとして、やがて大人として社会へ出ていくにあたっての根本を養うことが求められる。すなわち、時間や規則を守り他者と付き合うという集団生活への適応、また体育・音楽・図画工作・家庭科といった実体験を伴いつつ人生を豊かに過ごすための学習だ。さらに近年では総合学習の時間と銘打って、より幅広い学習・体験をするようになっている。
幼稚園や保育園を経験している生徒も多いとは言え、多くの小学生にとって長時間椅子に座り、先生の話を聞き、課題をこなすという我慢をする体験はなかなか大変なものだ。それにすんなり適応する子もいるし、なかなかうまくいかない子もいる。楽しみを他に見出してどうにかやっていくことを覚える子もいるし、授業中に抜け出したり他のことを始めたりする子もいる。小学校を舞台にするなら、そんな風景も盛り込んでいきたい。

活躍させるのは難しいけれど

主人公としての小学生はなかなか難しい存在だ。肉体精神両面で幼く、できることの幅が狭い。また社会的にもあくまで庇護される側であるため、信用もないしお金もあまり持ってない。遠い場所、危険な場所に自分から移動するのは難しい。マスコット的キャラクター、守られ助けられるキャラクターとして登場するほうが多そうではある。
もちろん、彼らが日常的に暮らす社会の範疇で事件を起こす手はある。放課後に遊びに出掛けた先だったり、行きつけの商店街だったり、夜の学校だったり……あくまで現実寄りでも、ファンタジックな文脈に持ち込んでも、色々な物語が作れそうだ。
また、インターネットの世界は肉体的な制約を飛び越えられるため、小学生でも活躍できる余地は十分ある。むしろ、ゲームの経験や幼いながらの頭の柔らかさをいかして、小学生だからこそ大活躍ーーなんてことも十分あり得る。
このように、子供だ、まだ幼い、と思っている大人たちの裏をかく、足を救うというのは小学生キャラクターの見せ場だ。大人たちは知らないのである……子供は確かに純粋で無知だったりもするけれど、一方で狡猾でもあったりすることを。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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