♠29回「ギャンブラーは儲からない」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

物語の中ではカッコよくとも

賭博(ギャンブル)で稼ぐ賭博師(ギャンブラー)といえば、現実の有様はともかく物語的にはアウトローな香りが漂うカッコいいポジションだ。では、賭博で稼ぐというのは本当にできるのか? 日本では賭博は法律違反だが、いくつか公営ギャンブルがあり、またパチンコなどは三店方式(一度景品に交換してから、それをさらに別の場所で現金に交換するため直接換金したわけではないとするやり方)で実質的なギャンブルの立場を許されている。また遠くないうちカジノも誕生するだろう。これらで稼ぐ賭博師がいる余地はあるのだろうか?
基本的には、賭博師は儲からない。そういう仕組みになっている。各種ギャンブルには還元率(かけた人間に平均どれだけ戻ってくるか?)が決まっていて、競馬競輪競艇オートレースの公営ギャンブルは約75%、パチンコは85%前後、宝くじも約45%となっている。他のギャンブルも同じで、基本的にかけた人間のお金が増えて戻っては来ない構造になっている。どうしてそうなるかといえば「親(胴元、運営者)が損をするようでは長くギャンブルを開き続けることができない」からだ。儲かるからこそやり続けることができるのであり、親が儲かるということは子が損をするということで、ギャンブルで儲かるのは基本無理、という結論が出るわけだ(なお、ある種のスキルだったり、情報だったりで平均してプラスに持っていく人はいる)。

楽しく賭博をする人は

このような情報は比較的広く知られている。なのになぜ人はギャンブルに行くのか。色々な心理があるのだろうが、多いのは「自分だけは勝てる」という気持ちがあるのではないか。還元率はあくまで平均で、万馬券・大穴を当てた奴はいる。自分がそいつにならないとなぜ言えるのか? ……こんな錯覚があるのではないか。
これらを前提にギャンブルを楽しむにはどうするのか。一つには、「そもそもお金を儲けようとしない」ということになる。もしかしたら儲かるかもという夢だけ見て、基本的にはお金を消費するゲームとして楽しむ。熱くなって大金を使っても基本的に帰って来ないから、ほどほどで引き上げる……これができるキャラクターは理性的で、非常に大人に見えるだろう。逆にいえば、ギャンブルで儲けようとする、熱くなって全額使おうとする、負け始めて引き上げられないのは、ちゃんとした大人に見えないキャラクターということだ。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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