第29回「生徒会・委員会の現実と架空」

榎本海月の連載

学校自治と言うけれど

部活と並んで、授業の繰り返しが続く学校の日常にささやかな非日常を提供してくれるもの。それが生徒会・委員会活動だ。物語においても、なにがしかのイベントが始まるきっかけになったり、あるいは特別な委員会に所属することが物語のメインテーマになることが多い。
生徒会・委員会は学校自治のための組織である。もちろん、学校の運営は主に教職員・用務員・事務員・警備員といった人々によって行われる。しかし、彼らだけでは手が回らなかったり、全てを大人の手で行うには予算が足らなかったり、あるいは生徒たちの自主性を高めるためという教育的意図があって、生徒たちにある程度の自治を行わせるという仕組みになっているわけだ。
ただし、そのような自治は多くの場合「手伝いだけ」あるいは「形だけ」になっていることが多い。生徒たちの仕事は多く「大人を手伝う」ものであって、例えば学校としての大方針の決定や、予算の執行のような重要な権限はなかなか彼らには与えられない。

虚構の中の生徒会・委員会

しかし、それはあくまで現実の話だ。物語の世界においては、現実ではあまり見られないような強力な力を持った生徒会・委員会が存在しうる。生徒会だけ特別な(だいたいは白!)制服を着ているケースなどよく見る。
彼らはものすごく優秀なのかもしれない。あるいはその反対で、力に溺れた無能な連中なのかもしれない。後者のパターンだと彼らを操る黒幕がいるのかもしれないが、既得権益を守ることにだけ長けているパターンもままある。
それはたとえば、伝統的に生徒の自主性を尊重している学校なのかもしれない。あるいは、優れた人材の育成や、自主的に判断・行動・企画ができる人材の育成を目的としている学校という可能性もある。何代・十何代か前の先輩たちが血で血を洗う闘争の末に奪い取った権限なのであれば、大人側が巻き返しを図ってくる展開も十分にありえる……。逆に、たまたまその代の生徒会・委員会のメンバーが優秀すぎて特別な権利を獲得したのなら、彼らが卒業した途端に権利を剥奪されてしまう可能性が高い。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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