♠27回「罪にならないケース」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

心神喪失

前回紹介した話は刑事裁判のことで、これとは別に民事裁判が行われ、被害者から加害者に損害賠償が求められることになる。一般に民事は刑事の後で行われ、刑事でどんな判決・量刑が出たかで左右されることが多いようだ。
また、心神喪失状態で判断力がない、責任能力がないと見なされれば、刑事でも民事でも罪には問えないと判断される可能性がある。魔法で操られた人間、悪の組織で脳改造をされた怪人は人を殺しても罪には問われないだろう……ただ、後述するように魔法や常識を超えた超技術は因果関係の認定が難しいので裁判は大いに揉めるだろうし、世間の人々が納得するとはとても思えないので大いにバッシングされてしまうだろうが……。

魔法による殺人

ちなみによく言われることだが、「魔法で人を殺しても殺人罪には問われない(可能性が高い)」という話がある。傷害や殺人、暴行の罪を問うには「この手段で暴行(傷害、暴行)した」と因果関係が証明されなければならない。刃物や銃で人が殺せることはわかっているが、魔法で人が殺せることは(少なくとも私たちの暮らす現代日本では)自明の理にはなっていない。だから、罪に問うのは難しいのだ。
もし物語の中で魔法による殺人を証明しなければならないとなったら、どうすればいいのか。道具を用いる魔法なら、その道具を発見し、使い方を解読する必要がある。しかし、「名前を書けば殺せるノート」を押収したとして、その因果をどう証明すればいいのか? 死刑囚を殺害する実験などが許されるのか、それで殺したとして裁判官は因果を認めるのか(偶然の可能性もあるのでは)?
魔法使い・超能力者本人にしか使えない場合、もっと問題は面倒になる。因果を証明するためには本人に使わせるしかないが、自分の罪を証明させるなんてことがどうしたらできるのだろうか。騙したり、はめたりの策略が必要になる。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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