第27回「部活と大会」

榎本海月の連載

大会・発表会の意味

ポピュラーな部活の場合、各校の部が集まって日頃の研鑽を競う大会があるのが普通だ。
どうしても運動系のイメージが強いが、文化系だって各種大会、あるいは発表会などはいろいろある。ただ、文化系の場合は公的な学生だけの大会というよりは、民間のイベントに高校生として参加……などというケースが多いようだ。
大会の規模や回数は部活の種類によって大きく違う。インターハイ(高校選手権)はその中でも特に代表的なものだが、柔道やサッカーのようなメジャー部活だとこれ以外にも大きな大会があったりする。

偉大なる甲子園

特に有名なのが高校野球(硬式野球)の「甲子園」だ。兵庫県西宮市(実は大阪ではない!)に春と秋の年二回、全国の高校球児が集まってきて熱戦を繰り広げる。この甲子園そのものがプロ顔負けのエンターテインメントであるわけだが、その前には全国で無数の高校が一度負けたら終わりのトーナメントで地方予選を勝ち上がってくるわけで、こちらはこちらで人々に娯楽を提供している。むしろエンタメ的には地方予選の方が白熱するとさえ言われる(実際、多くの高校野球ものエンタメで、クライマックスになるのは地方予選決勝であったりする)くらいだ。
どうしてそうなるのか。例えば、ほとんどセミプロの域に達している甲子園出場野球部に対して、地方予選には非常にバラエティ豊かな出場校が存在する余地が大きいせいがあるかもしれない。甲子園常連の強豪校がいるかと思えば、「毎年何回戦までは進出するがそれ以上は……」という強豪校・中堅校が各ランクにいて、「毎年一回戦負けだけれど今年こそは!」などという弱小校もいる。スポーツを重視する新鋭校が現れたかと思ったら、ちょっと前まで弱小だった公立校にある日突然熱心な先生や事情があって流れてきた学生たちがチームを作り、ある年突然頭角を現す、なんてことも実は実際にある(甲子園にもそういう個性豊かなチームが出てくることはあるが、やはり地方予選のほうがいろいろいる)。
それらの部は設備や選手、チームメンバーにもはっきりと差が現れる。最新装備をずらっと揃え、選手もいわゆる「県外組」(野球をするために他地域からやってきた選手たち)が並ぶ部もいれば、幼馴染で構成されたチームが創意工夫で腕を磨いたり、野球部に人が足りないから試合の時だけ助っ人を他の部から連れてきたりもする。そういう個性は(そのまま描くにせよ、別の物語に移植するにせよ)大いに物語のネタになると思わないだろうか?

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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