「お前のせいで犯罪がバレた」は通らない
現代日常もの、あるいはミステリーなどでたまにあるシチュエーションに、「テレビカメラに映ってしまったせいで犯罪(あるいはそこまでいかなくとも後ろ暗い行為)がバレる」というケースがある。
奥さんに嘘をついて日曜に出かけたら、テレビロケに行き当たってうっかり撮影されてしまい、それがテレビ画面に映ってのがしまって奥さんにバレて……という典型的だろうか。
犯罪までいかなくとも、学校や会社をサボっているところがうっかり写真に写ったりなんだりでバレて不迷惑を被る、ということは十分にありえる。そうなった時、訴えることはできるのだろうか?
まず第一に「お前の行動のせいで俺の犯罪がバレた」という主張そのものは不可能である。違法行為(不倫など)による被害を法律は守ってくれないのだ。
ちなみに、こういう原則があるので、たとえば「麻雀で勝った金を相手がちゃんと払わない」という主張も、法律で解決するのは難しい。麻雀で金を賭けるという行為そのものが賭博として違法だからだ。
そのため、アンダーグラウンドものなどで賭博が題材になった話ではしばしば「いかにして勝って帰るか?」というシチュエーションが題材になる。勝ちすぎると胴元や対戦相手が「こんな金は払わない!」と言い出したり、あるいは闇討ちしてきたりするが、賭博が違法である以上法律でこれらの相手とやり合うのは困難だからだ。そこで、たとえば「相手より強力な武力で圧倒する」や「勝ち金を持って逃げる」、「そこそこの勝利に収める」などの対策が必要になるわけである。
肖像権を訴えることだけはできる
話を戻そう。もともとのシチュエーションである「撮影されたせいで不利益を受けた」という話の場合、実は法律的にワンチャンスがある。つまり、「意図せずに撮影されたため、肖像権の侵害である」という主張ができるからだ。この場合、「撮影されて当然の場所での撮影」だと訴えにくい(そのような場所に行くということが実質的な意思表示として受け取られるから)が、そうでなければ肖像権侵害を訴えることはできる。慰謝料を取ることはできるかもしれない。
ただやっぱり、違法行為そのものを打ち消すことはできないので、注意。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。