卒業式に何を思う?
十二回、つまり一年分に渡って続けてきたこのシリーズも三月でおしまい。これが学生にとっての一区切りでもある。
この季節のイベントといえば、もちろん第一には卒業式だ。最上級生が卒業し、学校からいなくなる。いなくなる方(卒業生)にとっても、いなくなられる方(在校生、教師)にとっても、大きな事件である。
親しく付き合っていた相手がいなくなることで寂しさを感じ、惜しみ、関係が終わる(そうでなくとも遠くなる)ことを残念がる人もいるだろう。イヤな相手がいなくなってハッピー、ということもあるだろう。大きな変化があると思っていて、実際最初はちょっとショックだったけど、いつの間にか新しい関係も生まれて思い出さなくなった、なんてこともあるに違いない。
もちろん、卒業式そのもののイベント性も見逃せない。式の中で泣いてしまう人もいるだろう。定番の歌もいろいろあって、そこに思い出を感じている人もいる。かつては大定番として「制服の第二ボタンをもらう」などというのもあったが、さて今もこの習慣はあるものだろうか……。
卒業式で騒いでいる生徒たちを、誰もいない教室や屋上から見る、というのも一つの青春的イベントといっていいだろう。彼や彼女はどうしてその祭りの環の中に入っていけないのだろう。そのことを残念に思っているのか、それともホッとしているのか。
そして四月がやってくる
卒業式(終業式)が終わったなら、あとは四月の入学式(始業式)、あるいは新しい環境に入っていくまで春休みだ。期間で言えば夏休みほど長いものではないが、一区切りが一度来ているだけに(また、すでに桜が咲いているなど季節もいい時期だけに)なかなか特別な長期休みと言える。
特に、卒業生にとっては自分が宙ぶらりんになったような、どこにも所属していないような、そんな複雑な感情を抱えているかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。