恋人がいればクリスマスは天国?
十二月はいよいよ冬に突入する季節だ。学生たちもそろそろ制式のコート(ダッフルコートが多いだろうか)を着込んで学校へやってくることだろう。
この時期をどんなふうに過ごすかは、学年によって、学校によって、大きく違うはずだ。一年生や進学を考えていない生徒にとっては二学期の期末試験があるくらいで、むしろその先に待っている年末年始の長期休みで頭がいっぱいかもしれない。
なにしろ十二月の終盤にはクリスマスが待っている! 意中の相手とクリスマス(日本ではその前日のイブの方がなぜか恋人の時間とされる)を過ごしたいとアプローチに励んだり、そのための資金を稼ぐためにバイトに勤しんだり、という学生も多いことだろう。
あるいは年末年始は家族でどこかに旅行へ行って過ごすという習慣もそれなりに定着しているから、期末試験が終わるとそそくさと地元を離れて……という生徒も結構いるに違いない。
受験生に年末は地獄?
一方で、学業・受験に励む生徒たちにとって、この時期は夏休みなどと並んで(あるいはそれ以上に)重要な、ラストスパートの季節である。なにしろ、受験本番はもうすぐやってきてしまうのだから! クリスマスではしゃぐ同年代や同級生を横目に、来年の受験、あるいは来年以降の受験を目指して必死に勉強するというのも、それはそれで「十二月の学生の過ごし方」であろう。
また、専門学校など技術・芸術系の生徒にとっても、そろそろラストスパートの季節がやってくる。進級制作、卒業制作をきっちり完成させないと留年・退学ということもありうるのが彼らだ。いや、仮に進級・卒業させたとしても、作品によって衆目を集め、仕事や職場の口を引き寄せない限り、望む職業にはつけないのが彼らの宿命だ。ここは踏ん張っていい作品を作って並べなければ、先がない。いや、そのいい機会なのだと思えば、クリスマスなど羨ましくない、いやもちろん羨ましいけれど――このあたりの微妙で複雑な気持ちもしっかり描いてほしい。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。