♠19回「雷はどのように落ちるのか?」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

落雷がもたらすダメージ

雷が落ちる音を聞いたことがない、という人はあまりいないだろうが、それを差し迫った驚異として感じたことがある人は少ないのではないか。だが実際のところ、落雷は年に数十人の死者を出すこともある立派な災害だ。
雷は凄まじい電気エネルギーを秘めている。これが人体に当たるとどうなるのか。フィクションの世界ではまっ黒焦げになって髪の毛がちりちりになって……と、どちらかというと熱の面に注目されることが多いようだ。あとは「レントゲンのように骨が透ける」「体がしびれる」あたりだろうか。
リアルにはどんなダメージが発生するのか。もちろん骨は透けて見えないが、軽い熱傷やまひなどは発生する。しかしそれ以上にメインの症状として起きるのが、心肺停止による即死であるという。他にも幾つかの症状をもたらすことがあり、面白いところでは記憶喪失なども発生する。
また、雷は必ずしも直接人間に当たるとは限らない。木などに当たったあと、電流が溢れて横へ伸びて人間に当たる(側撃雷)ケースや、地面や電線などを通って人間に当たる(誘導雷)ケースがあり、特に側撃雷は多くの死者を出している。

雷は金属に落ちるとは限らない

落雷から身を守るためにはどうしたらいいのか。雷は多くの場合、「高いもの」に引かれる性質を持っているので、近くに雷が落ちて危険だと感じたら(音より先に光が来る性質から、光ってすぐ落雷の轟音がしたら比較的近いとされる)開けた場所、高い場所にはいないほうがいい。なお、一般に「雷は金属に引き寄せられる」と考えられているが、これは実際には俗説であるようだ。
具体的に、どこに逃げたらいいのか。建物や乗り物(バイクやオープンカーでは意味がない)の中が最も安全といえる。高い木のそばなどは側撃雷の可能性がある。しかし、保護範囲(高い物体から4メートル以上はなれて、かつその物体の頂点を45度以上の角度で見上げられる場所)なら比較的安全とされる。ただ、この場合も寝転がってしまうと誘導雷でしびれや火傷などが発生する可能性はある。
雷は別の問題も生む可能性がある。落雷は雷サージ(アンテナに直撃あるいは誘導雷で雷が当たり、異常な電圧が発生する)によって家電を故障させることがあるのである。パソコンで作業をする仕事の人などは特別なタップを使うなどして電サージ対策をしないと、ひどい目にあうかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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