旅行、バイト、合宿――挑戦の季節
八月は夏休み本番だ。学校の性質や場所にもよるが、七月の後半に始まって八月いっぱい、というのが日本における一般的な夏休みだろう(大学や専門学校だと九月まで食い込むことが多いし、北海道など涼しいところの学校は八月中に夏休みが終わることも)。
夏休みにしかできないことはなんだろう。たとえば旅行がそうだ。
幼いうちは家族で観光地に行くのが定番になるが、思春期、そして大学生にもなれば、自分たちだけで旅行に行こうという気持ちも盛り上がってくる。友達と連れ立って遠隔地の有名テーマパークにでかけたり、自分ひとりで田舎への帰省に挑戦したり、自転車や徒歩で遠くへ出かけようとしてみたり。海外への留学や、バックパッカー旅行への挑戦、などというのは難易度的にも未知への挑戦という意味でも最高級であろう。
その中では思わぬ出会いもあればピンチもあり、大きな成果・成長を獲得することもあるし、生涯に残るような(身体・精神両面で)傷を得てしまうこともあるかもしれない。それらは物語として描くのにふさわしいものだ。
また、夏休みだからこその挑戦という点では、短期集中のアルバイトや、大学生なら運転免許取得合宿、そして受験勉強のための合宿授業、なども「あるある」だろう。これらは普段の生活の中でもありうることだが、夏休みだからこそ特別な場所へ飛び込み、普段会わない人と出会い、そこで特別な事件と遭遇する可能性がある。
当たり前の日々だとしても
夏休み、すべての人に特別な出来事がやってくるとは限らない。不思議なこと、特別な出会いがないもんかなあと切望しつつ平凡な一日――ゲームやったり、漫画を読んだり、宿題をやったり、プールや海へ行ったり――をだらだらと過ごす学生の方がきっと多いのだろう。
あなたの物語の主人公は、特別でない夏休みをつまらないと思う中で事件に遭遇するのだろうか。それとも、あとから振り返ってみれば友だちと過ごす夏休みが最高に楽しいいっときだった、といつか気づくのだろうか。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。