第12回「図書室」

榎本海月の連載

教育のための書物

 学校につきものの設備の一つが図書室である。学校が教育のための場所である以上、その教育をサポートするために学生なら誰もがアクセスできる大量の書物を用意しておくのは当然といっていいだろう。
 その蔵書は学校の性質に大いに左右される。小学校なら児童書や童話の古典、図鑑などに加え、教養的な内容の漫画が揃っている。中学校や高校だともっと硬い内容の本が増えるが、ライトノベルに代表されるような娯楽小説も多く、そこで「目覚めた」経験のある人もいるのでは。
 大学の図書室(図書館)は専門的内容がかなりの部分を占める。そこらの図書館にはないような希少で重要な本を所蔵していることも多く、蔵書の質は大学の質に少なからず関係しているとさえいってもいいだろう。また、大きな大学なら学部ごとに図書室を持っているのも珍しいことではない。
 図書室は静かな場所だ。ここで騒ぐことは推奨されない。利用者は静かに本を読むか、あるいは静かであることそのものに価値を見出して自習をしたり、昼寝をしたりしている(これも推奨はされないが……)。だから、図書室に騒がしさがやってきたら、さぞ白い目で見られることであろう。

静けさを求めて

 物語における図書室という視点で考えてみよう。
 ここにいる学生は、基本的には知識や情報、あるいは学業を求めてやってきているはずだ。だから、図書室で描かれる物語はそこに関係していることだろう。つまり、知識を尊ぶがゆえにどうしても他の学生たちから浮いているキャラクターが図書室に居座っていたり、何かしら調べたいことがあって探しものに来たりするわけだ。インターネットで多くのことが調べられる現代でもあっても、本にしかない情報も侮れないものである。
 あるいは、静けさそのものを求めているのかもしれない。体調不良や精神的な不調、あるいはいじめなどから逃げ込む場所がここしかない、ここ以外はうるさすぎる、などということがあってもおかしくない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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