初期消火
物語の中で各種の災害・事故に遭遇した場合、あなたのキャラクターはどんな風に対応するだろうか。ここから何回かはその点に注目していきたい。
まずは火事だ。最も遭遇しやすい災害・事故であろう。
火事の原因はさまざまである。料理中の事故、家電の故障、静電気が埃に火をつけるなどの自然発火、そして故意の放火などなど。
原因はともあれ、小規模な火事なら消化できればそれに越したことはない。天井に火が届いていない程度の規模に対処することを初期消火といい、水をかける、バンバンと叩いて衝撃を与える、濡れた布で包む、砂をかける、などの手法で消すことができる。また、服に火がついた場合などは、その場でゴロゴロ転がって消すことが推奨されている。
なお、火を消すにはまず水だという強いイメージがある人も多いだろう。実際、水をかければ初期消火段階なら大抵の火が消えるのだが、いついかなる時も水が推奨されるわけではない。これは水を用意するのが難しいことが多かったり、水をかけると家電などがダメになるケースもあるだろうが、それだけではない。油由来の火事(揚げ物の油に火がつくなど)に水をかけても鎮火せず、むしろ爆発することがあるのだ。
広い場面で役に立つのは消火器だ。セーフティを解除し、火にノズルを向け、引き金を引くことで消化剤を発射・噴射することができる。この消化剤は大抵粉状だが、近年は泡のものもある。また、特殊な場所では水を発射するものも使われている。さらにビルなどでは水を強力な勢いで噴射する消火栓が設置されていることだろう。
不思議な力があったなら
もしあなたのキャラクターに不思議な力があるなら、もっと簡単な解決法があるかもしれない。水を呼ぶ、風を呼ぶ、強烈な衝撃を与えるなどの力で火を消してもいいが、もっと別の解決法もある。火の周囲から空気を消し去ることができれば、あっという間に火は消えてしまうのである。火を消す方法は主に可燃物(火種)を除去するか、温度を下げるか(水はこれ)、酸素を除去するかで、これは三つ目に位置する。
あるいは、これを利用して魔法の不思議さをアピールする手もあるかもしれない。油の火事に対して魔法使いが水を召喚し、現代人が慌てる。爆発するかと思いきや、そのまま火が消えてしまう。魔法使い曰く、私は火に対抗する水のエレメントを呼んで火の力を押さえ込んだのである。油の火事だから爆発する云々というのはそちらの価値観であって魔法には関係ない、という……。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。