第11回「中庭」

榎本海月の連載

中庭のある学校

 学校に存在するエアポケット的な場所は屋上だけではない。中庭もこれに類する。
 中庭は学校における公園のようなものだと考えればいいだろう。木立があり、ベンチがあり、芝生がある。昼休みなどにはそこで学生が横になって休んだり、あるいは友人たちとのお喋りに興じていることだろう。
 しかし、中庭はどんな学校にもあるものではない。学校本来の機能とは繋がらない場所だけに、よほど敷地が広かったり、余裕があったりしないとつくらないからだ。だから、公立よりも私立、街中よりも郊外の学校でよく見ることだろう。校庭や駐車場を含む空間の中に先に紹介したような設備があって中庭的に成立していることはあるかもしれないが、それを「中庭」と認識する人は少ないだろう。
 そう、実用的な機能を持たない中庭は都会的・先進的な学校の象徴になりうる場所だ。せっかくだからモニュメントの類もあるとさらにいい。学校の業績や功績者の存在を知らしめる俾、あるいは現代芸術的なものが中庭に立っていると、いよいよ雰囲気が高まる。それらは機能的ではないが故に、余裕と権威をあらわすのだ。
 田舎からやってきた学生、勉強や訓練ばかりやってきた学生は、そのような整備された中庭と、そこで優雅におしゃべりをするものたちに、大きなカルチャーショックを受けることだろう。

中庭は憩いの場所

 とは言っても、別に中庭という場所にそこまで重い意味を必ずつけなければいけないというわけではない。キャンパスが広めの大学ならだいたいどこでも中庭的な空間はあるし、先に紹介したような「中庭っぽい場所」ならさらに多くの学校で見ることができる。
 なにより、そこで日々を過ごす学生たちにとっては「当たり前の場所」なのだから、別に気負ったりはしない。昼休みに買ってきたパンなり弁当なりを食べてくつろいでいるのが当たり前のはずだ。この辺りの感覚は物語を作るにあたって大事なので忘れずに。
また、中庭は屋上と同じように「開けた」場所であることも重要だ。しかも屋上と違って地上にあるので、外から何か、誰かがやってくる可能性がある。大学の中庭なら本当に公園のように近隣住民がやってくるかもしれないし、鳥や犬などが入り込んでくるかもしれない。
 そのように開けた場所であるということは、維持に金と手間がかかるということでもある。芝生は定期的に刈らねばすぐに見苦しくなるし、モニュメントも清掃が必要だ。美しい中庭を維持するためには、用務員のような整備担当の努力が要るのである。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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