第7回「プールと武道館」

榎本海月の連載

プールがあるのは日本くらい?

 前回は学校における運動、体育の授業をする場所としての校庭(グラウンド)と体育館を紹介した。しかし、体育の授業ではもっと特殊な運動をする可能性がある。
 たとえば水泳だ。水に慣れ、泳ぐ練習をするためには、よほど特殊な立地の学校を除けばプールが必要になる(川や海での水泳練習は危険なので、普通の学校では行われないだろう)。
 日本では小学校・中学校・高校なら基本的にプールが設置されて水泳の授業が行われている。しかしこれは日本独自の取り組みで、世界的には日本ほど熱心にプールを設置している国は珍しい(背景には水難事故が相次いだことがあるとされる)。
 学校のプールは普通屋外に設置されており、夏のみ使用される(お金のある学校や水泳に力が入っていたら室内温水プールもある)。これを使用しての水泳の授業は喜ぶものもいれば憂鬱なものもいて、前者は単に泳ぎが好きなケースから、クラスメイトの水着姿に喜ぶものまで。後者はカナヅチ(泳げない)な連中で、仮病を使って見学しようとするものもいるだろう。
 ただ、夏の授業中のプールだけが学校プールの見せてくれる顔ではない。屋外プールは枯れ葉などで何かと汚れるものだから、使用前には掃除が欠かせない。初夏には水着を着てモップ片手に掃除する光景が見られる(罰でやらされているのかもしれない)し、秋や冬には水が抜かれて汚れた季節外れの寂しい顔を見せてくれる。

武道館の意味

 もう一つ、特殊な体育の授業として武道が取り入れられるのも、日本の特徴である。特に剣道と柔道だ。これを行おうと思ったら、普通の体育館ではフォローしかねるところがある。剣道はともかく、柔道は体育館の床でやったら大変なことになりかねない。そこで、学校によっては専門の武道館が設置される。
 武道館は体育館に付属しているのかもしれないし、独立して存在するのかもしれない。あるいは、そもそも体育館より天井の高さを要求されないので、校舎の中に置かれている可能性もある。地下に設置されているケースもあるのだ。
 剣道場なら板敷き、柔道場なら畳張り。あるいは弓道場がある学校もあるかもしれない。それなら弓を射つための場所も的を置く場所も必要になるので、相当広い空間が必要になるだろう。
 これらは授業で使うこともあるが、しかし「ヌシ」になっているのは部活で使っている剣道部、柔道部の連中であろう。武道館には彼らが部活で使っている道具が部室から溢れていたり、あるいはすっかり占領してしまって勝手に使えない、なんてこともあるかもしれない。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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