♠6回「武器が必要になったなら……(3)」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

日本刀に憧れるのはわかるけれど

銃がダメなら、昔ながらの武器を使うしかない。手に持って振り回したり、突いたり、叩いたりする武器だ。
日本ならではの武器といえば、まずはなんといっても日本刀であろう。「折れず、曲がらず、よく斬れる」とその性能は評判だし、なによりもカッコいいイメージが強く染み付いている。物語の中に是非とも登場させたい人は多いのでは。
しかし、現代日本において日本刀は美術品であり、また危険物としても見られている。そのため、買うにも作ってもらうにもいい値段がするし、日本刀を持っていたいならちゃんと登録をしておく必要がある。加えて、一般的に売られている刀は白鞘といって柄も鍔もない状態になっている。これでは実戦に向かない。これらの問題を解決するためには十分な知識と技術とコネが必要だが、例えば旧家ならその問題も解決できるかもしれない。
ちなみに、装飾用や殺陣に使うなどの用途で、刃が付いていない模造刀というのもあって、殺陣用なら十分な耐久力と破壊力がある。峰打ちをするようなものだが、金属の棒で殴れば十分な威力があるのだ。

殴ったり、斬ったり、色々

そもそも単に相手を殴ってダメージを与えることだけを考えるなら、もっと身近で使いやすい武器候補が色々ある。鉄パイプで殴る、フライパンで叩く、傘や杖で突いたり叩いたりする。あるいは、スポーツ道具にも手軽に武器になりそうなものが揃っている。竹刀や木刀はもちろんのこと、金属バットで頭を殴ればほとんど模造刀と同じようなものだ。ホッケーのスティックでもいい。
それだけでも人間相手なら十分なダメージを与えられる。ただ、致命的な傷を負わせたいなら頭を殴ったり、尖った部分で目をついたりする必要があるだろうけれど。これらの武器のいいところは比較的簡単に手に入るところだが、悪いのは耐久性が低いことだ。フライパンも物によっては柄が壊れたりするだろう。元から殴るためのものではないのだからしょうがない。
この種の日常道具の中でも特に便利なのは雪や土を掘るのに使う大型で金属製のショベル(スコップ)で、重さがあるから威力もあるし、振り回しやすいから遠心力も乗る。また、先端が意外と鋭いから切断力さえ期待できる。
工具に類する道具の中にも武器になりそうなものは多い。ハンマー、バールなどはもともと手に持って使い、振り回すのに適していたり打撃に向いた鋭い部分があったりして効果的だ。鋸は刃こそついているが振って斬るのにはあまりに向いていない。映画やゲームなどでよく使われるチェーンソーはうまく相手当てれば大ダメージかもしれないが、重いし、電源が必要だし、大きすぎるしで、使いこなせる人がいそうな気はしない。
最初から刃が付いている道具ならもっといい、と考える人も多いだろう。鉈や手斧なら破壊力十分だが、都市部ではホームセンターくらいでしかなかなか手に入らない(地方なら比較的なんとかなりそうだ)。もっと手軽なのが包丁だ。ごく小さな果物ナイフから、ほとんど日本刀めいたフォルムの刺身包丁まで実にさまざまである。ナイフ類もこれに準じる。
ただ、刃がついた武器は銃刀法で言うところの刀剣に該当する可能性がある。それは「刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ」と言う定義だ。これに該当する武器を携帯して街を歩くなら、偽装しないと面倒なことになる可能性がある。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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