♠5回「武器が必要になったなら……(2)」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

銃が欲しい! しかし難しい!

現代人が最も簡単に想像できる「強い武器」は銃であろう。しかし、アメリカのように国家的方針として一般市民が銃を手にできるようにしている国に対して、日本は銃砲刀剣類所持等取締法(いわゆる「銃刀法」)で厳しく規制されているのでかなり難しい。
主に狩猟用の空気銃や散弾銃、ライフルを所持することは可能だが、資格取得や許可申請に非常に手間がかかる。物語のキャラクターがなんらかの目的を達成するために一から合法的な銃の所持を目指すのは無理があるだろう……そもそも、モラル的な問題もある。ただでさえ厳しい目に晒されがちな現代日本で銃を持つ人々の中に、あたかも他意を持って資格を得た人がいるかのように物語を書くことが、創作であっても許されるだろうか?これはなかなか難しい問題だ。敵役や、間違った信念に基づいて動いている人(復讐者など)ならアリかもしれない。物語の中で否定される人だからだ。
そうなると、最も現実的な銃砲の入手法は、ヤクザやマフィアのような反社会組織、犯罪組織と接触することになるだろう。コネがあり、かつ金を積むことができれば、密造銃や密輸銃を手に入れることができる。種類は粗雑で暴発が怖い拳銃から、治安機関や軍隊が使っているようなサブマシンガン・アサルトライフルまでピンキリだ。
一方、日本にも合法的に銃を持っている集団はある。警察、自衛隊、そして在日米軍だ。平時、常識的な方法でこれらの組織から銃やこれに類する兵器を入手するのは基本的にには難しいと考えるべきだろう。横流し品もそうそうあるとは思えない。ただ、特別な事情があれば話は別だ。大災害で文明が滅んだ後の基地跡地で残された銃を入手したり、催眠術やテレポートなど特殊能力を駆使して潜入するなどができれば、高性能な銃や桁違いの破壊力を持つ重火器を入手できる可能性がある。
銃はどこかから手に入れるしかないのだろうか。実は、十分な技術と設備さえあれば自分で作る手もある。市販のエアガンを違法改造して威力を上げれば殺傷能力を持たせることができるが、それだけではない。金属弾を火薬で発射するいわゆる普通の銃だって、実は作ろうと思えば作れるのだ。以前は相応の金属加工技術・設備がなければ難しかったが、近年は3Dプリンターで作れるようになってしまった。もちろん日本ではこれは犯罪で、逮捕者も既に出ているのだが。

銃は難しい武器

しかし、銃は仮に入手できても万全に活用するのが難しい武器でもある。まず、撃って当たるとは限らない。距離がちょっと離れると当てるのが難しいし、反動や暴発で身体を痛めたり怪我したりということもあり得る。こまめに整備しないとまともに使えなくなるし、なによりも弾丸が無くなればただの金属の塊だ。
これらの訓練・整備・補給の手間を考えれば、プロ以外が手を出すのは危険な武器であると考えるべきだろう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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