榎本です。約2ヶ月ぶりに連載を再開します。
今回は前回の連載の中から皆様の興味が高かったものの続編や、昨今の情勢などを踏まえたお話なども再度していきたいと思います。改めましてよろしくお願いいたします。
さて、再開の1回目に取り上げますのは新人賞の選考で一次はほぼ通過するけど受賞できないし、編集さんからも連絡が来ないならです。連日検索エンジンから多数の方がこの記事を読んでくださり、皆様の注目度の高さがわかります。
前回の記事で書かせていただいたように
一次選考は通過するけど受賞できなかったり、編集さんから連絡が来ないのは、作家性や将来性が弱いのです。
今は新人賞がたくさんあり、各編集部は色々な工夫をして新人さんを集めたいと思っています。
実際に、二次選考落選でも編集さんから連絡が来たケースもあったり。私自身、お手紙やメール、お電話などをしたことがあります。
ただ、作家性、将来性とと言われても漠然としていますよね。
そしてこれ、答えがわからない。たぶん誰にもわからないです。時代の空気との相性もあると思います。
なので、どうするかというとやはり
たくさん書くしかない。これに尽きます。
なるべく色々なテーマ・キャラクターで書いてみて、自分がどこにマッチしているかを考えていくしかないと思います。
ほぼ毎回一次選考を通るということは、文章力、構文力、構成力などは問題がないのです。
大事なことは、この時代に「あなたしか表現できないなにか」があるかなのです。
そのためにも、なるべくたくさんフィクションを小説に限らず、映画や舞台などいろいろなことを吸収し
自分ならこういう結末にしたい、こういう共感や感動を読者に伝えたい
ということを常に考えてほしいと思います。
そして、なにより大事なのは、読者を考えること。
一昨年、大きな賞を苦節の末に受賞できた教え子さんはとても器用で、それこそどんなプロットでもその人が書けば一次は通るような人でした。
ただ、受賞はできていませんでした。それはやはり、「読者が見えず、自分の好きなことを書いていたから」だと思います。
「自分の好きなことを楽しく書く」ことは非常に大事です。ただ、そこで、その作品に共感してくれる読者がいることを強く考えてほしいです。
具体的にいうと
1)どんな読者に読んでほしいのかをきちんと想定する。
年齢や好きな作品、ジャンルなど具体的に決め、その想定読者があなたの作品のどんなキャラクターに共感し、感動し、読んだ後に何を感じてほしいかまで自分なりに考えられると良い。
2)しばしば私の著作などで「ガイド」という概念をお話します。
作品の舞台はどこで・いつで・今はどんな状況でということを読者さんがわかるようにすることです。
いわゆるユーザービリティ、読みやすさにもつながるので、しつこくならない範囲で状況や場所の説明は入れてほしいと思います。
シーンごとに意識をしてみてください。
3)最後は文章的な技法になりますが、一文をなるべく短くしましょう。
主語と述語の関係が分かりづらい文章は読むのが難しいです、誰が何をしたのかが簡潔にわかる文章を心がけるといいと思います。
榎本秋
榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。