第5回「教室は学校のすべて?」

榎本海月の連載

教室のいろいろ

校門をくぐり抜けて学校の敷地内へ進んだら、普通はそのまま教室へ入る。ここで1コマ(1時限)50分あるいは90分の授業を受け、10分あるいは15分の休み(愛知県ではこれを「放課」と呼ぶ)を経てまた次の授業を受け、正午近辺になったら1時間近いお昼休み。そうして一日分の授業を消化したら晴れて放課後、ということになる。
この間のほとんどの時間を教室で過ごすのだから、学校という空間そのものは広いけれど、多くの生徒にとって学校とはイコール教室ということになるのかもしれない。特に高校まではしばしば一つの教室で授業を受け続けるので、いよいよこの傾向が強まる。一方、専門学校や大学などは選択した授業の行われる教室へ移動することが多いので、「ここが自分たちの教室」という感覚は薄いことも多いだろう。
ともあれ、多くの生徒にとっては、教室こそが学校あるいは学校で過ごす時間(つまり今の自分の「日常」の)象徴的な場所になるはずだ。授業で教師から興味深い話を聞いたり、授業を受けながらぼんやりと物思いにふけったり、休み時間に友人と他愛もない話に興じたり。それは刺激的な時間かもしれないし、死ぬほど退屈かもしれない。
逆に言えば、その日常をぶち壊す非日常的なイベントは、やはりこの教室で起こすのが基本となる。教室の窓から校庭を見ていたら不思議な光景を目撃してしまったり、朝のホームルームで転校生を紹介されたり、教室に突然ゾンビやテロリストが乱入してきたりするわけだ。いつも過ごす当たり前の場所で不可思議だったりそれまでなかったりする出来事が巻き起こってこそ、衝撃もひとしおとなるのだ。

教室にあるもの、ないもの

教室はどんな様子で、そこには何があるのか。広さはいろいろだが、壁に囲われた部屋であることがほとんどだろう。だいたいは一面が多くの窓を持ち、反対のもう一面が廊下側で、大きい教室なら入り口が二箇所ある、というところか。ただ、近年作られた校舎なら、廊下側に壁がないなど、非常に開けた空間になっている教室も多い。
生徒たちが座るための机と椅子が人数分並び、その前方には教卓と黒板(ホワイトボード)がある。黒板の横にも空間があって、時計であったり、時間割やポスターであったり、学級文庫の棚であったりを配置することが多いだろう。
一方、その反対側には棚あるいはロッカーがあって、個人の荷物を入れられるようになっている、というのがよく見るパターンである。しかしこれは教室をあまり移動しないタイプの学校で、移動するタイプの学校ではこの種のロッカーはそもそもないか、教室外の別の場所に設置されているだろう。これとは別に掃除用のロッカーが各教室に設置されているのが一般的だ。
昼は騒がしい教室は、放課後には別の顔を見せる。残っていた生徒たちも三々五々帰っていくと、教室はガランとする。そこにあえて残っていたり、もう一度戻ってくる生徒は、何を目的にしているのだろうか? 誰かと待ち合わせているのか、それとも一人になりたいのか。夕暮れで赤く染まった教室でばったりであった二人にはその後どんなドラマが待っているのだろうか。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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