第2回「物語に学校を出すにあたって、使えるポイント(後)」

榎本海月の連載

学生は似た者どうし?

前回は物語に学校を出すにあたって、ぜひ使ってほしいポイントとして、「学生時代には時間制限がある」し「学校の外にも世界が広がっていることを忘れがちになる」という話をした。
今回はこの話をもう少し深めてみたい。つまり、どうしてそんな思い込みをしてしまうのか。それは学生たちが多くの時間を学校で過ごすからなのだが、実はそれだけではない。もう一つの理由がある。
それは「学生たちは同質・近似の特性を持った人々の集まりであることが多い」ということだ。この結果、関係性が濃厚になることが多い一方で、無理解や対立もまた発生しやすい。
この説明ではよくわからないかもしれない。もう少し噛み砕いてみよう。
学校は学ぶ場所、教育を施す場所だ。その都合上、どうしても生徒はある程度近い要素を持った人間を集めることになる。義務教育及び高校では(一部の特例を除いて)年齢を区切って学生を募集するし、さらに公立の小学校や中学校は特定の地域に住んでいる子どもたちが通っている。特定の職業への就職や技術習得を目指す専門学校に通う人々も、似たような性質や趣味を持っている人が多いはずだ。大学になると全国から人が集まるし特に最近は社会人入学も多いから一概には言えなくなるが、それでも受験によって学力で選抜される以上、大まかな共通項は生まれやすい。
こうして生まれた似た者同士の集団は、共通する話題が多く、わかりあいやすい。しかし、似ているからこそちょっとした違いによって反発・対立が起こりやすいという性質もまた持っているのだ。全く似ていない同士なら早いタイミングでそれぞれにグループを作って距離を置くのに、なまじ似ている・近い要素があると最終的には激しい対立や排斥につながることがあるのである。
この性質を押さえておくと、学園もの・青春ものを書く時に大いにやりやすくなるはずだ。

対立や競争が生み出す面白さもある

応用も効く。たとえば、似たような性質を持っている生徒たちの間に、ある日突然全く異質の人物がやってきたらどうなるだろうか? 単に転校生とそれ以外の対立で話を進めたらつまらない。異質な人間が混ざると周囲が影響されて変わっていったり、あるいはもともと隠されていた要素が顕になって、「私たちはもともと言うほど同質ではなかった」なんてことになるかもしれない。この種の「転校生もの」というべきパターンは伝統的な人気テーマだ。
また、異質な特性を持った生徒ばかりが集まった学校(クラス)、というのも面白いだろう。彼らの特性がバチバチにぶつかりあえば物語はきっとドラマチックになるし、「そもそもどうしてそんな学校(クラス)になったのだろう」という点に着目してもドラマが作れる。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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