♠1回「少年少女を拾って連れ帰ったら誘拐罪!?」

榎本海月の物語に活かせるトラブル&対応事典

誘拐と略取

ある日突然少年あるいは少女を拾い、同居生活を過ごすうちに事件が巻き起こって――あらゆる物語で普遍的に用いられるパターンの一つだ。
リュック・ベッソンの映画『レオン』や『WASABI』などがよく知られている(後者は存在を知らなかった実の娘だが)。漫画やライトノベルではまるで落ちてくるかのように唐突に現れることから、「オチもの」と呼ばれる類型に組み込んで考えられることが多い。
ただこのパターン、現代日本でやると思わぬ問題が発生する恐れがある。少年あるいは少女を拾ったキャラクターが、誘拐の罪を問われる可能性があるのだ。
一般的に私たちが誘拐と呼ぶ行為は専門的には「拐取」と呼ばれ、言葉巧みに騙すなど間接的な手段を用いる「誘拐」と、暴力だったり脅迫だったりの直接的な手段を用いる「略取」に分かれる。
拐取に関係する罪状は目的や状況ごとに幾つかある。わいせつ目的や営利目的、身代金目的などだが、今回のケースで注目するのは「未成年者誘拐罪(刑法第224条)」だ。
成年なら、拾われたキャラクターが「私は誘拐されていない」といえば話は済む。しかし、未成年者の場合、当人がたとえば相手方の家に行くことを同意していたとしても、それでOKとは限らない。
まだ一人前の大人と法律的に認められない未成年には、監護権を持った監護者がいる。この人物の同意がなければ、十分に未成年者誘拐が成立する可能性があるのだ。たとえば「ウチの娘を言葉巧みに連れ込んだ」という具合である。

キャラクターそれぞれの対応

――以上のような事情を知っていれば、良識のある冷静な人物はそう簡単に「謎の少年少女を自宅(自分が支配している場所ということで誘拐罪の可能性が上がる)に連れ込」むという危険な行為はしない、ということになる。
少し親切な人なら、警察に電話して庇護を求める手助けをするだろうか。もっと親切な人なら濡れた体を拭いてあげる、温かい飲み物をあげる、ファミリーレストランなどで食べさせる、くらいのことはするかもしれない。怪我をしていたら病院だ。
それ以上のこと――家に連れ込む、しばらく住まわせる――をするのは本当に図抜けたお人好しか、なんらかの過去の因縁やトラウマを刺激されたのか、それとも全くの考えなしか良からぬことを企んでいる人か、では

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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