トラブルは物語につきもの
この連載の目的は、現実に起きうるトラブルとそれへの対処法を紹介することで、創作の役に立ててもらうことにあります。
物語には各種のトラブルが欠かせません。主人公や主要キャラクターたちが何らかのトラブルに陥ってしまってそこからの脱出を図ったり、トラブルのせいで変わってしまった状況・関係から物語が始まったりするのは定番中の定番といえます。
しかし、そのトラブルが現実の現代日本では起きそうもないことであったり、主人公が取る解決法がとても現実的でないものであったなら、どうでしょうか? 多くの読者が違和感を得てしまうのではないでしょうか。
これが架空のファンタジー世界なら「まあこの世界はこうなのかな」「作者がこうだと言っているんだからこうなんだろうな」と納得してくれる可能性も高いでしょう。しかし、現代日本、あるいは現代と地続きの近未来社会などだと、「いや、こうはならないでしょ」と冷めてしまう読者がずっと多いものと思われます。
そこで、この連載を通して
・現実に起きそうで、かつ物語の中で使っていけそうなトラブルやアクシデント
・そのトラブルへの適切で自然な対処法
を紹介していこうと思います。
連載の注意点
ただ、注意点がいくつか。
「適切で自然な対処法」はどんなキャラクターもそうするのが自然だ、というものではありません。ある種の技術や知識、機転や体力が必要なものも多く含まれます。目の前で倒れている人がいた時、適切に応急処置を施すのが自然なキャラクターもいれば、逃げそうなキャラクターも、怯えるキャラクターも、間違った行為をしてしまうキャラクターもいるでしょう。あなたのキャラクターに相応しい対応を考えてあげてください。
連載で紹介する内容は、執筆時の法律や状況、流行などに基づいてのものとなります。これらの状況は日々刻々と変化します。
法律が変わったり、研究が進んで治験が更新された結果として「以前はこういう対応が良いと信じられていたが、今は有害だとわかっている」ようなことがしばしばあるのです。
実際、今回の連載にあたって、10年ほど前の本をネタ元として使おうとした所、言及されていた法律が変わった、ということがありました。ネット検索などで簡単に変化を調べられるので、自分でも調べることを心がけてください。
連載の中で紹介する内容の中には、誤って行えば危険なもの、場合によっては犯罪につながるような知識が含まれる可能性があります。これは物語の中で敵、あるいは主人公本人が法を犯して問題を解決することが十分にあるからですが、あくまで創作のための知識なので悪用しないでください。製作者としては具体的な記述はしないように心がけます。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。