A:観察経験を積みましょう
私の経験上、この悩みを抱えてしまう人は、人間観察が足りていない人が多いようです。
つまり、人間観察が不足しているから、ストックできているキャラクターパターンが少ない→パターンが少ないから似たようなキャラクターばかり書いてしまう、というケースです。
人間にどういう種類があるか……というとなにか妙な言い方になりますが、しかし現実に存在する人間というのはなかなか個性的なものだというのは、多くの人が無意識のうちに知っていることであるかと思います。
「普通の人」に見えても、過去が違い、仕事が違い、家族が違い、趣味が違い、目的が違い、悩みが違います。実のところ「そっくり同じ人」なんてどこにもいないのです。
その違いを演出するためには、人間観察の量をこなして、パターンを蓄積するのが一番なのです。この人間観察は現実の人間を見るだけでなく、物語の中の人を見たり、あるいはエッセイを読むなどでも効果が期待できます。
A:要素を変えるのです
しかし、人間観察は一朝一夕で十分な量を行えるものではありません。具体的に、なにかいい方法がないものでしょうか。
おすすめは、キャラクターの立場、状況、性別などを意図的に変えていくことです。たとえば「平凡な男子高校生」が複数人いるような物語では、彼らのそれぞれに個性的な味付けをするのは(人間観察をしっかりしている人であっても)簡単ではありません。同じ立場だからある程度にてきてしまうのはしょうがないですよね。
なので、何かしら要素に変化をつけていくのです。高校生とサラリーマンと主夫が同じ場所に集まって事件に巻き込まれるような話なら、自然と各キャラクターに違いが出てきますよね。いやそこまで極端でなくとも、出身地が違うとか、趣味が違うとか、いろいろな「違い」を用意してあげることは決して難しくないはずです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。