A:プロットをたくさん作りましょう!
授業ではしばしば「創作力を身につけるための方法は、たくさん読む、たくさん書く、そして見てもらう」ことだと話しています。これは本連載でずっと触れてきたこととも重なりますね。
つまり、「読む」ことで文章力やテクニックを吸収し、「書く」ことで経験を積み、また「見て」もらうことはモチベーションに繋がるからです。ただ、これではフォローしきれない能力があります。それが発想力です。
物語のために適切なアイディアを豊富に思いつく力は、作品を書くだけではなかなか身につきません。作品のためだけにプロットを書くというあり方ですと、アイディア出しの機会がどうしても少なくなるからです。
そこで、作品執筆とはまた別に、発想の訓練としてのアイディア出しを日常的にやることをおすすめします。週に2-3本、200文字から400文字程度の短いものでいいので、プロットを作る習慣を身に着けてください。
「そんなの大変だよ、できないよ」という人もいるかも知れません。しかし、大変だからこそやる意味があります。ノルマをこなすためにはアイディアが必要で、アイディアのために既存の作品からヒントを導き出そうとしたり、日常生活の中でもアイディアがなにか無いかと考えることになるからです。これは「なにか思いついたらいいなあ」と受動的に構えたり、「長編書くからアイディアを考えるぞ」と泥縄的にやるのでは得られない経験です。
とはいっても、どうしても思いつかない、という人もいるでしょう。そこで、幾つかのスタイルを紹介します。
・「ありえない」
→キャラクター、組織、集団、物語パターンなどの「普通そういうふうにならない」「普通はそういうことはしない」姿を考えてみましょう。そこから物語を作ってみましょう。
・「三題噺」
→3つのキーワードから物語を作ります。その際、「人物」「場所」「もの」という三種類のワードを使うルールを守りましょう。
A:「手抜き」に要注意
ただ、日頃からプロットを作って発想力を鍛えるやり方には、問題もあります。短いプロット作りになれるなかで、「考えにくいところをごまかしてしまう」などの、ある種の手抜き的な癖がついてしまうことがあるのです。主人公がヒロインと仲良くなったり、強敵を倒すなどのポイントを、「色々あって」「なんやかんやで」などと書いて済ませてしまったら要注意です。
そこで、プロットを作るときには「重要な要素は飛ばさない」と意識する必要があります。自分で「これ書くの難しそうだな」と思った所、また「主人公の動機に関わるな」と思ったところなどが、重要な要素に関係するケースが多いので、覚えておいてください。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。