Q.新人賞突破のために何が必要でしょうか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:求められることはたくさんあります!

前回はプロ作家になるためには新人賞で評価されるのが王道だ、という話をしました。そうなりますともちろん、この質問になりますよね。「どうしたら新人賞を突破できるのか?」と。
必要なことはもちろんたくさんあります。
まずはいい作品を書くこと。当然ですね。それから賞のレギュレーションをきっちり守ること。締切だったり、枚数だったり、投稿方法だったり(最近は紙で送るところは減りまして、メールやデータアップロードが主流になりました)をちゃんと守れないと、そもそも審査してもらえません。
できればその新人賞、そのレーベルに合致した作品、時代性に合致した作品を書きたいところですが、これはなかなか難しいので、無理はしないほうがいいでしょう。
新人賞の選考過程では様々な人が様々な視点で関わります。ライターや新人作家などが「下読み」として担当する一次審査では、小説としての体裁が整っているかが確認され、編集者や有名作家などが関わるそれ以降の審査では商品としての質が問われます。その過程で多様な質や能力が求められるわけです。

A:大事なのは自分の「好き」です

それでは、新人賞を突破するような作品は完全無欠の、誰の目で見てもなんの欠点もない作品ばかりなのでしょうか? そうではありません。
新人賞は多種多様にありますので一概には言えないのですが、少なくとも私の見てきた限りは、欠点の少ない作品より、キラリと光るものがある、磨けば輝きそうな作品のほうが好まれていたように思います。……もちろん、どんなに長所があったとしても、決定的にダメな短所があったりしたら落とされますけどね。たとえば盗作をしているのが明らかだとか。
その意味で、世の流れに合わせようと頑張るよりは、まず「自分の好きなもの」「自分が楽しめるもの」を作品の軸において、その上で流行にも合致するような模索をすることをおすすめします。長所は「好き」と直結することが多いようです。
そうはいっても、「好き」だけではいい作品は作れません。そこでもう一つのおすすめは「読みやすさ」を意識することです。状況がきちんと描写できていますか? 主語が混乱していませんか? 接続詞が多すぎたりしていませんか? 時系列が飛んで説明不足になったりしていませんか? こういうポイントは読者にとってストレスになります。注意しましょう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。

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