A:いいからとにかく書きましょう
これ、作家志望者の悩み永遠のベスト1であろうと思います。もちろん「いい作品が書けない」「いい文章が書けない」等々さまざまな悩みがあります(だから本連載も毎日毎日飽きもせず長々書けているわけですが)。しかし、最も苦しむのは「完成させられない」ことでありましょう。
どうしたらいいのか。絶対の答えは「とにかく書く」です。書かなければ完成しません。貴方以外の人も書いてくれません。であれば、書くしかありません。
もちろん、工夫の余地はあります。以前紹介した「書けるところから書く」は非常に有効なテクニックですが、それ以外ではどんな手があるでしょうか。
ノルマを設定するのは良い手です。「一日三枚書こう」など、実現可能な範囲でノルマを決めると、やがて余裕が見えてきてもっと書けるようになったりします。また、ノルマがあると「あと一枚書けば楽になれるんだ」ということで、気持ちがかなり楽になるということもあるようです。
ただ人間、自分ひとりで発揮できる自制心などたかが知れています。せっかくノルマを設定しても「まあ今日はいいや」などと怠けてしまうケースが良く見られるのです。そこで他人の目を借りる手が使えます。SNSで報告する人がよくいますね。そうすることで見張ってもらい、怠けにくくするのです。
書けば書くほど直したいところが見えてきて、直しているうちに気づいたら「俺、ずっと序盤だけ書いているな」というのもよくあるケースです。実際、直したいのはわかるのです。わかるのですが、それで足踏みになっては意味がありません。
そこで、気になってもよほど問題のあるケースでなければ、「最後に直す!」と決めて途中では一旦スルーするのもおすすめです。その際は※マークなどをつけて後で検索して確認できるようにするといいでしょう。同じように、気になったことは各種マークをつけて後々確認・点検できるようにすると、後々まとめて手を入れる事ができるので、作業コストを下げられるでしょう。
繰り返しますが、大事なのはとにかく「書く」こと、「積み上げる」ことです。量が増えると(残りの量が減ると)気持ちよくなりますし、続きを書きたいという気持ちに繋がります。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。ネット小説創作入門』などがある。
2019年に新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトアイデアの考え方』(秀和システム)を刊行。
2020年の新刊には『古代中国と中華風の創作事典』(秀和システム)がある。
PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。愛知県名古屋市の【専門学校日本マンガ芸術学院小説クリエイトコース(https://www.ndanma.ac.jp/nma/course/novel/)】講師として長年創作指導の現場に関わっている。