Q.会話が延々続くのはダメですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:そんなことはありません!

ライトノベルを始めとする娯楽小説はよく、こういうポイントで責められますね。「会話ばっかりで地の文が全然ないのは質が低い小説だ」的な意味で。もしかしたら皆さんも心の中の負い目としてそんなことを感じてはおられませんか?
でも、古くから娯楽小説というのはそういうものだったのです。今となっては古典的な作品になっているもの――たとえばデュマの『三銃士』なども会話が延々と続いている(原稿料稼ぎでわざとやっているフシさえある!)ことがよく知られています。
キャラクターの会話は、多くの(小説を読み慣れていない)読者にとって最もストレスなく物語を飲み込める形です。会話だけでそのシーンの様子が想像できるなら、無理に地の文を挟み込まなくていい、という考え方も十分成立するのです。
まだ小説を書きなれていない段階、あるいはなかなか地の文が思いつかないという状況では、あえて会話だけ思いつく限り書ききってしまって、その上で「後から地の文を書き足す」というのもおすすめです。
書き添える地の文としては、周囲の状況(キャラクターの外見など含む)、喋っているときの仕草、長々会話で話すと鬱陶しくなる内容の要約などがあります。

A:会話シーンが続くのは……

ところで前半の回答、私は「会話文が続く描写」のつもりで書いたのですが、もしかしたら別の悩みだった可能性があります。それは「会話シーンが続いていしまうケース」です。これはなるべく避けたいですね。
キャラクターの会話だけで物語が続いてしまうと、どうしても印象が単調になりがちです。
会話が行われる場所や状況を変える、(物語の性質にもよりますが)アクションやバトルのシーンなどを差し込む、回想シーンを入れ込んでいく、そしてもちろん「事件」を増やすなど、読者の興味を引き、印象を変えるような手法をどんどん用いて、単調にならないような工夫が必要です。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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