Q.初心者は一人称と三人称、どっちがいいですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:基本的には三人称がおすすめです

これもよくよく聞かれる質問の一つです。「一人称の方が書きやすいけれどそれでいいのか?」と悩む人もいれば、「とりあえず三人称で書いてみたけど自分には向いていない気がする」と迷っている人もいる、という光景をよく見てきました。で、そんな彼らに相談されるわけです。私はどう答えたでしょうか。
基本的には「三人称がおすすめだよ」とアドバイスします。三人称は作家の視点、神の視点から物語を書くもので、各登場人物の行動や状況を「彼はこうだった」「彼女はこうした」と三人称で記述したものです。
三人称のいいところは、あらゆる状況を客観的に描写することができるところです。何しろ、「神様の目」ですからね。どんな場所で、どんな人がいて、前のシーンとはどんな関係で、誰がどんな事を考えていて……というのをどれだけ書いても問題がありません。だって「知っていておかしくない」んですから。
このような事情から、「最初は三人称で書いてみたら?」というのが榎本メソッドにおける基本的なスタンスになります。三人称で描写に制限を受けずに書くことで、どんなことをどれだけ書くのかという感覚をつかめるようになるわけです。

A:あえての一人称もアリです

では、初心者は一人称には手を出してはいけないのでしょうか? そんなことはありません。特に文章を書きなれていない、そもそも小説自体が初めてだという人は、一人称からスタートするのも十分アリな選択肢であろうと考えます。
なぜか。一人称は主人公(あるいは語り手)の視点から物語を綴るスタイルで、「私は~」「僕は~」と一人称で文章を書くところが特徴です。この形では、主人公の見たこと、感じたことをそのまま書くことになりますので、そのキャラクターの気持ちや感じたことを想像することさえできれば、「小説を書く」ということがわからない人でも、ある意味自分の思考をそのまま出すような形で書くことができるのです。
このようになるべくストレスのない手法によって小説を書く経験を積み、創作への苦手意識を減らす、というのは十分アリであろうと私は思うのです。
もちろん、一人称の思考そのまま提示スタイルで面白い作品が書けるか、というとなかなか難しいところではあります。キャラクターやストーリーが魅力的ならそれでも十分「読ませる」作品は作れるでしょうが、文章をもっと良くすれば、という印象も与えてしまうかもしれません。自分の状況と目的に合わせて選択しましょう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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