A:アイディアが大事です
短い話を面白く書くのは、実は長編を面白く書くよりも大変です。長編はちょっとくらい余計な要素が入っていても面白く読めますが、短編はそうはいきません。少ない分量の中で的確に盛り上げ、きっちり終わらせなければいけないからです。
まずポイントとしては、短い話はアイディアが非常に重要だ、ということが挙げられます。逆に言えば面白いワンアイディアさえあれば物語が成立するのが短い話のいいところと言えるでしょう。
この辺、Twitterでバズるショート漫画に近いところがありまして、あの種の作品ではしばしば「1-4pの漫画としては大変楽しめるが、もっと長い話をそれだけで成り立たせるほどでない」という現象が見られます。アイディアには適切な長さというものがありまして、「1p漫画としてはすごく面白いけれど掘り下げてもそれ以上面白くはならない(一発ネタ、なんて言い方もしますね)」ものもあれば、「長編小説何冊分もの内容があって初めて書ききれる」ネタもあるのです。
短い話の場合は特にこのネタとしての合致具合が大事で、如何にインパクトがあったり読者の興味をひいたりするネタを用意できるか、というのが作品の完成度に重要な意味を持ちます。
A:シンプルになりすぎないようにしましょう
短い話はそのボリュームの関係上、非常にシンプルな話になりがちです。何かしらテーマがあり、あるいはアイディアがあって、それを読者にアピールしたらおしまい、という構造です。
これ自体はある程度仕方がない(特にショートショートと呼ばれるような短い分量だとどうにもならないものがあります)のですが、短編と呼ばれるようなある程度の長さのあるものなら、もう少し工夫が必要です。具体的には「どんでん返し」的な要素を入れ込みたいのです。「最初はこういう話だと思っていたら実は違った」というのが理想ですね。
そこでおすすめなのが、「複数の話をくっつける」やり方です。最初にあった主人公の目的や彼の置かれた状況が、物語の途中で変わる(新しい敵が現れる、真実が明かされる、裏切られる、新たな目的を発見する)のです。これは短い話がシンプルになりすぎることを防いでくれます。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。