Q.お話がどうしてもダラっとした感じになります……

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:意識して「事件」を入れていきましょう

これは小説を書き始めた頃、あるいは逆に書きなれてしまったり、「なろう」などで長い話を書いているときなどに出てくる疑問でしょうか。
必要なエピソードを書いていく、もしくは思いついたエピソードから順番に書いていくと、ふと気づくのです。
「あれ、これなんかダラっとしていて面白くないな」
「普通に先が見えるな」
と。
このように中だるみするのはなるべく避けたいところです。
物語にはヤマ(盛り上がり)とタニ(落ち着き)がほしいもの。この両者が交互に来てこそ、ヤマの面白さが楽しめますし、また先がわからなくなってドキドキワクワクの感覚も出てくるのです。
では、具体的にどうしたらいいのでしょうか。榎本メソッドではこういうときには「事件」を作ろう、というアドバイスをします。
事件というのはドラマチックな出来事のことです。アクションやバトル、お色気、真相暴露、あるいは文字通りの「殺人事件」。このような展開をテンポよく差し込んでいくと、ヤマとタニがくっきりして作品全体にリズム、ドライブ感が生まれます。
映画で考えてみるとわかりやすいですね。2時間程度の物語を盛り上げるため、多くの映画ではある程度のリズム(例えば10数分に一度、など)で「事件」が起きるようになっています。映画はアニメやテレビドラマよりも長いですし、本のように「一時中断」というわけに行かないので、客の興味を引き続ける工夫が勉強になるのです。
この「事件」の代表例がいわゆる「どんでん返し」なのですが、これについては次項で詳しく紹介します。

A:恐れず書きましょう

しかし、時に創作初心者のうちは必ず事件を入れなければ云々などと考えながら作ってもなかなかうまく行きません。プロットの段階では気にしたほうがいいですが、実際の執筆時にはそこまで頭が回らない、気になっても書いている最中はどうにもならない、ということが多いようです。
そこで、「気になってもとりあえず完成(一段落)までは書いてしまいましょう」というのがおすすめになります。「事件」が起きない、あるいは数が少なくてダラッとしてしまう問題は、書きながら直す(事件を足す)よりも、書き終えた後に全体のバランスを見ながら不要なシーンや描写を刈り込んだほうがうまくいくケースが多いようなのです。
そうでなくても「ダラっと感」は書き終えた後の見直しのほうが有効なので、とりあえず執筆最中は諦めて書いてしまいましょう。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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