Q.キャラクターの組み合わせのコツを教えてください!

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:対立ありき!

キャラクターの魅力というものは、必ずしも単体で成立するものではありません。複数のキャラクターの関係性の中でこそ見えてくる魅力というものがあります。恋人たち、親友、ライバル……いろいろな関係があり得ますね。これは特に女性向けエンターテインメントで顕著ですが、もちろん男性向け作品でも重要なポイントです。
そこで「良い組み合わせとはどういうものか」を考える必要があるわけですが、もちろん簡単ではありません。だから今回のような質問が来るわけですが、さてどうしたらいいでしょうか。
榎本メソッドでは第一に「正反対のキャラクターを組み合わせましょう」とお話ししています。似たような二人を配置しても、普通に分かり合ったり、あるいは普通に距離を置いたりして、物語が始まりにくくなってしまいます。そこで、正反対のキャラクターを配置するというテクニックが役に立ちます。
たとえば、不良と委員長。熱血ヒーローとクールな悪党。若手刑事とベテラン刑事。犬と猫……いろいろなお話で見たことがある組み合わせですよね。彼らは正反対なので、接触するとさまざまな形で対立を始めるでしょう。この対立がドラマになるのです。
対立するということは、しばしば相手と深くわかり合うことにつながります。わかりやすいものへの理解はある程度まで早く進むがほどほどで終わり、嫌いな相手や嫌な相手、自分と違う相手のことをこそ深く理解してしまうということがあるのです。

A:奥底で共通するものを見出しましょう

では、とにかくキャラクターを対立させればいいのでしょうか? そんなに簡単なものではないのは、皆さんには既にお分かりですよね。ただぶつかり合うだけだと、殺し合って終わり、魅力を削り合って終わり、会話やドラマが発生せずに終わりという可能性も十分にあり得ます。そのため、「対立する関係、ぶつかり合う関係ではあるけれど、それだけではない関係」になるように設定する必要があります。
おすすめは、「立場や外的な要素(一見してわから性格、キャラクター性など)は明確に違うが、実は内的な要素(目的やポリシー、守るべきルール、大事にしているものなど)では共通する」という関係を作ることです。
たとえば、不良と委員長です。「この二人は学校の中での振る舞いは正反対で、なにかと対立対決する関係にある。しかし、実は共通するところもある。それはどちらも自分の良しと信じたルールに忠実であることだ」……どうでしょうか。この共通点を通して二人はわかり合ったり、共闘したり、お互いに足らないところや間違っているところを認め合ったりできるわけです。他にも、二人の刑事が「悪を許さない心」で一致したり、犬と猫が主人への(性質は違うけれど)愛情で一致したりするところから、ドラマが生まれるわけです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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