A:観察あるのみ!
まず大前提として、物語に登場するキャラクターは架空の存在です。それはあくまで書き手の、そして読み手の中にしかいない存在です。
しかし、読者にカッコいいと思ってもらい、また応援してもらうためには、「まるで本当にいそうだ」と思ってもらえるような造形をすることは非常に重要です。では、どうしたらいいのでしょうか。
最もおすすめなのは、人間観察の経験を積み重ねることです。つまり、「本当にいそうなキャラクター」を作るためには、「本当にいる人間」をたくさん、しかも注意深く見る必要があるわけですね。絵を描く人も、具象的なスケッチを描くためには、対象をしっかり観察するでしょう。当然のことです。
どんな対象を観察するべきでしょうか。まずは家族や親しい友人。学校や仕事で出会う人。そして、通勤通学や近所で見かける人、あるいは駅前などの人が多い場所を通り過ぎたり楽しそうに話していたりする人々。
そこにはどんな人がいて、どんな格好で、どんな話をしているのか? どんなタイプの人がどんなキャラクター性を持っているのか?
その蓄積こそが、あなたが「こういう人が本当にいたらこういうふうにするんじゃないかな」と考えるための土台になります。
A:キャラクターを掘り下げてみましょう
ただ、観察によって自分の中にアイディアがたっぷりと積み重なっていたとしても、意識できない状態では作品に反映できないケースが良くあります。
そこで、しっかりアイディアを自分の外に出して、「あ、このキャラクターはこういう方向なんだな」と確認する必要があります。
具体的には「キャラクターの掘り下げ(細部の詰め)」を行うのがおすすめです。たとえば、キャラクターの履歴書を書きます。それはつまり、職業や過去、考え方について知ることですね。あるいは、趣味だったり、日々の暮らし方だったり、親しい友達との関係だったり、自宅の様子だったりを考えます。
このような要素は、普通にプロットでそのキャラクターについて書くときには見落とされがちですが、キャラクターについて掘り下げるときには重要です。
なによりも、「このキャラクターはこっちだろうなあ」と書き手が考える時、実はその無意識の中で言葉にならないけれどなんとなく決めている、あるいは感じているキャラクターの本質や方向性が作用していることが多いからです。「本当にいそうな」キャラクターを作りたいのなら、時間を書けて、細部までしっかり考える必要があります。それは細かいところが重要というよりも、細かいところからキャラクターの本質に迫る必要があるからなのです。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。