A:共感に注意しましょう
読者にキャラクターを好きになってほしい。これは当然のことです。現代のエンターテインメントでいかにキャラクターが重視されているかは、みなさんが一番良く知っているはずですよね。
現代のインターネット社会では、キャラクターの人気が出さえすれば一夜にしての「バズ」が期待できます。
では、どうしたらいいのか。以前紹介した「カッコよさ」もこの一環ですが、今回は別のアプローチをしてみましょう。
一つのやり方は、読者の「共感」あるいは「感情移入」を誘う要素をもたせることです。読者と同じような立場にしたり(職業、家庭環境、青春の悩み……)、読者と共通する弱みや苦手、趣味をもたせたりするのが基本になりますね。
こうするとキャラクターが身近になります。ただカッコいいだけのキャラクターは自分と縁遠く、「すごい」とは思っても「好きだ」にはなりにくいのですが、身近に思えれば「いいな」という印象も持ちやすくなるものです。すごいキャラクター、カッコいいキャラクターを作ることに夢中になっている人は、こんなところにも目配りすることをおすすめします。人間関係みたいなもので、グイグイと魅力だけで押していく人は意外と周囲から距離を取られがちなんですよね。
A:「応援してもらうためには」と考えてみましょう
小さい頃に子供向けのアニメや特撮などを見ていた時、テレビ画面に向かって「頑張れ」と応援していたことはありませんか?
いえ、今だって小説やマンガを読んでいる時に、主人公やヒロインが頑張っている様子、苦しんでいる様子のときに、「頑張れ」「負けるな」と心のなかで応援することは珍しくないはずです。
このように、応援してもらえるようなキャラクターは、読者からも好かれる可能性が非常に高いです。では、どうしたらいいのでしょうか。
キャラクター性という点で考えると、「素直で健気」だったり「まっすぐ」だったり「他人を責めない」だったりするキャラクターが応援をもらいやすく、読者の好感度を稼ぎやすいキャラクターと言えます。
ただ、これは一つの類型であって、好かれやすい人間性はそれぞれ。あなたの考える「こんな人を応援したい」というキャラクターでいいと思いますよ。
また、物語の中でのシチュエーションも大事です。苦難に耐え、困難を乗り越え、それでもまっすぐに生きようとするさまに、人は喝采をあげます。キャラクターに試練を与えてこそ、応援はもらえるのです。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。