Q.どんなテーマがいいのでしょうか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:概念的テーマは掘り下げましょう

前回、テーマとは「その作品で一番大事な要素」と言いました。
だから、この質問に対する最も正直な答えは「なんだっていい」になります。

でも、この答えはあまりにもざっくりしすぎ、不親切ですよね。だからもうちょっと細かく、皆さんの助けになりそうな答えを探してみましょう。

テーマと言われてみなさんがまっさきに思い浮かべるのは、「戦争」とか「平和」とか「愛情」とか「友情」とか……つまり、スケールの大きな概念ではないでしょうか。
これらの概念をテーマとして設定し、かつそのまま書き始めることができる人は、なんの問題もありません。ぜひどんどんと書き進めてください。
しかし、そうでない人が多いはず。一般的・汎用的なテーマを掲げたものの、どうしたらいいのかわからず立ち止まる人はどうしたらいいのでしょうか。

基本的なやり方は、広すぎるテーマを狭くする、あるいは抽象的なテーマからより具体的なキーワードを拾い上げることです。
たとえば先程名前を上げた中から「戦争」をピックアップしてみましょう。
戦争という概念の中には、さまざまなイメージが内包されています。戦争はカッコいい側面もありますし、残酷な側面もあります。前線で戦う兵士も、指揮所で時期を待つ将軍も、国内で私腹を肥やす官僚も、戦争のせいで治安が悪くなった地域を荒らす盗賊も、戦争のアオリを受けた貧しい市民も、みな「戦争」を構成する登場人物です。

このような多様なポイントの中のどれに注目するのか? しっかり要素を掘り下げることで、概念的テーマを使いこなすことができるでしょう。

A:いろんなテーマがありえます

では、そのような概念的テーマではないテーマのことも取り上げてみましょう。
そんな物があるかって? 実はあるんです。

榎本メソッドでは、作者が「これを重視したい」と考えれば、何でもテーマになりうるとしています。たとえば「主人公をとにかくカッコよくしたい」「夢の中で見たシーンをラストに据えたい」「女の子たちの会話で読者に楽しんでほしい」……本当になんでもいいのです。あなたが大事だと思うもの、読者に楽しんでもらいたいもの、感動してほしいもの、なんでもテーマになりえます。

もちろん、とりあえずテーマとして掲げては見たものの、そこからどうしたらいいかわからないということはよく起きるでしょう。このときの対処法は、概念的テーマのときと同じです。抽象的な言葉を具体的にしましょう。
主人公のかっこよさをアピールしたいなら、まず書き手が主人公のどこをカッコいいと思っているのか、それをアピールするためにどんなシーンが必要化を考えましょう。

何事も、筋道を立てる必要がありますし、テーマはまさにそのためのものなのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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