Q.テーマってどうしても必要ですか?

榎本海月のライトノベル創作Q&A

A:早めに固めておくことをおすすめします

テーマが大事だとはよく聞くけれども、具体的にテーマが何なのかはよくわからない、という人も多いかもしれません。
わからないし、キャラクターやストーリーや世界設定と比べて創作に絶対必要なものとも思えない、だからいらないんじゃないか……と考える人は少なからずいるでしょう。それはある程度仕方がないことです。

ただ、私としてはテーマは必要ですし、プロットを作っていく中でしっかり固めたほうがいい、と考えています。
それはなぜか。

最も大きい理由は、「テーマを明確にすると作品の方向性が固まるから」です。テーマにも色々な考え方がありますが、榎本メソッドでは「テーマとはその作品でいちばん大事な要素である」と定義します。言い換えれば「その作品はなんのために書いているのか」ということになります。
テーマが明確であれば、要素の取捨選択に優先順位をつけられるようになります。どんなイベントを物語の中に盛り込むべきか、どんなキャラクターを作中に登場させるかと考える時に、「このテーマに合致しているかどうか?」と選択基準があると、非常にやりやすくなります。

逆に言えば、テーマが明確でない物語は、芯がない物語ということができます。
テーマに縛られず自由に書くことができると言えなくもないですが、私の経験ですと大抵は「その時その時の作者の都合や興味に左右されてフラフラしてしまい、結局なにがやりたかったのかよくわからない」ものになってしまうようです。

A2:テーマは見出すものと考えることもできます

ここまで書いても、「いや、私はテーマとかよくわからないよ」という人もいるでしょう。
そんな人には、「テーマというのは必ずしも一番最初に決めなければいけないものではない」のですよ、とお話することにしています。
どういうことでしょうか。

テーマといいますと、まず最初に「今度は家族愛をテーマにした作品を作るぞ」と決めて書くもの……と考える人がいます。もちろんそういうやり方もアリなのですが、でもそれだけではありません。
まず、思いつくことをあれこれ書いていって、自分の中のアイディアをどんどん表に出す形でやっていく手があります。この時、テーマが見えていなくても構いません。
ある程度アイディアを出し尽くし、物語の大まかな形が見えてきて、その段階で初めて考えるのです。「はて、この物語のテーマはなんだろう」「自分はこの作品で何がやりたいんだろう」と。
つまり、自分との対話ですね。テーマってそれでいいんです。

後付とは違いますよ。自分のやりたいことというものは必ずしもはっきりしない、あるいは自分の思い込みとは違うところにあることが多いので、最初は深く考えず、無意識が表に出るのを待つのです。
そういうやり方もあると覚えておいてください。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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