A:締め切りを守ることです
プロを目指す以上、気になりますよね。どんな要素がプロ作家に求められるのでしょうか。
この問いをされるような人は、作品としての面白さ、あるいは文章力や発想力などを想像される方が多いのではないでしょうか。
もちろん、それはそうなんですが……正直に申し上げますと「作品が面白い」のはプロとして前提です。
編集者や読者がある程度の魅力を認めるからこそ、プロ作家になれるわけでして。
作品が面白い以上の要素がプロ作家には求められるのです。では、それはなんでしょうか。
一つの答えは「締め切りをしっかり守る」ことです。「安定したペースで作品を生産する」といってもいいでしょう。
プロの仕事(商業のラインに乗った創作)にはお金が発生します。それはつまりたくさんの人の生活がかかっているということでもあります。
アマチュアであれば予定通りし上がらなくても大したことはありませんが、プロならその結果として割りを食う、困る人がたくさんいます。原稿が1日遅れるということは、印刷会社や運送会社などその原稿を作品に加工して書店に届ける人の仕事が1日余裕がなくなるということです。
いえ、そうして無理をしてもらって間に合うならまだいいでしょう。もう間に合わないということになったら、プロ作家はもちろん、関わる人たちも皆仕事がなくなるということです。これは立派な社会的な損害です。そんなことを繰り返したら信頼を失い、プロ作家として生きていくことはできなくなります。
逆に言えば、締め切りをしっかり守って作品を作っていれば、その信頼は良い評判として仕事の大きな助けとなるでしょう。
「面白い」を大前提に、安定して作品を作って市場に出すことができる。それがプロ作家に求められる重要な要素だと、わかっていただけますでしょうか。
A:自分を磨きましょう!
もう一つの答えは「努力を怠らないこと」です。締め切りに間に合わせるというのも努力の一種ですがそうではなく、ここでいう努力は自らを成長させ、維持する努力のことですね。
具体的にどういう努力が必要なのでしょうか。アイディアを作り溜め続ける、文章力を鍛え続けるというのもそうなのですが、それ以上に「センスを磨き、更新し続ける」ことをここでは強調させてください。
どんなキャラクターやストーリーがいいのか、読者に喜んでもらえるのか、というのはある種のセンスです。
また、いまどんなキャラクターやストーリーが好まれているのか、流行っているのか、を知るのも同じこと。
このようなセンスはプロを目指している間、あるいはプロになってしばらくは自前のもの、それまでの人生で自然と培ってきたものだけでフォローできます。
しかし、プロになってから何年、十何年経った後はどうでしょうか。アウトプットばかりでインプットが出来なければ自前のセンスも錆つきます。また、自分が若くなくなれば若者が何を好み、何を嫌がっているのかわからなくなります。
となれば、積極的に己の視野を広げ、若者と交流し、センスを養う必要があるのです。以前と同じ感覚だけで作品を作り続けることはできない。それは作品の対価に金銭を得るプロとしての義務であり、求められることなのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』『日本神話と和風の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。