A:手近なところから視野を広げてみませんか
小説を読んだほうがいいのはわかった。じゃあ、具体的にどんな小説を読むと効果的なのか知りたい……なるほど、合理的です。
正直な答えとしては「何でもいいからたくさん読みましょう」「なるべくバリエーション多く読みましょう」なんですけれども、これでは答えになっていない、質問をした意味がない、と感じてしまう人が多いでしょうね。
そこで、ここでは読んだほうがいい順番を紹介します。
第一のステップは「好きな小説を読みましょう」です。元から好きな作家さん、前から好きなシリーズ、お気に入りのレーベル、好みのジャンル。そういうものでまったくかまいません。
最初から読むのが苦痛だったり興味が持てなかったりする作品を読んで、読書に苦手意識を持っても仕方がありませんからね。まずは純粋に「量を増やす」ことを意識して欲しいです。
第二のステップとしましては、「人気作品に手を出してみましょう」になります。ライトノベルならアニメ化した作品あたりが狙い目でしょう。アニメ化するくらいですから、人気があります。多くの読者を引きつけるに足る魅力を持っている、ということです。また、その時代その時代の流行を反映している(あるいは流行を作り出している!)のもこれら人気作品です。現代は一昔前よりはるかに好みが拡散している時代ですから、今時の流行を把握するのは簡単ではありません。売れ線作品をしっかり学んでおきましょう。
また、これらの作品を一つのきっかけにすることで、普段あまり読まないジャンルに手を出すのもオススメの読書法です。
読書から良いインプットを得るためには、似たようなタイプの本ばかりを読んでいてはいい効果が得られにくくなってしまいます。しかし、読み慣れていないジャンルはどうしても足が遠くなりますよね。売れ筋作品に手を出して見る、というのはいいきっかけになります。
第三のステップでは、もっと「違う」ジャンルに手を伸ばしてみましょう。普段みなさんがあまり読まないような古い作品、全く違うジャンルに挑戦するのです。児童文学、翻訳小説、SFやミステリー、歴史小説などどうでしょう。ライトノベルでも、90年代の作品はあまり読んだことがある人は多くないのでは。
特にオススメなのは、明治、大正、昭和の、いわゆる「文豪」の名作です。芥川竜之介、太宰治、宮沢賢治……教科書でしか読んだことがないという人も多いであろうこれらの作家の作品を、この機会にぜひいろいろと読んでみることをお勧めします、青空文庫というサイトで無料なのも嬉しいところです。
どうしてそのような古い作品、あるいはみなさんにとって縁遠い作品をお勧めするのかといえば、新鮮なアイディアというものはそこにこそあるからであり、また視野を広げる効果も期待できるからです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。