A1:玉石混交でいきましょう
創作はまずアイディアから。
魅力的なアイディアが思いついてこそ読者の興味を引く作品も書けるというものですよね。
ところが、いいアイディアというのはなかなか思いつくものではありません。
お話として作れそうなものはどこかでみたようなものだったり、奇想天外な誰も考えたことがないものは実際どんなふうにお話にすればいいか分からなかったり。なかなかいい具合にはならないものです。
どうしたらいいのでしょうか。いくつかアドバイスができます。
一つは、「とにかくたくさんアイディアを考える」ことです。面白くなりそうとか、書けなさそうとか、そういう考えは一旦頭の外に追い出しましょう。ストーリー、世界設定、キャラクター、なんでも構いません。「お話の種」を考え続けましょう。
いつも考えるのは辛いという場合は、たとえば10分とか20分とか時間を区切り、また時にはお題も決めて、ネタを思いつく限りメモ帳などに書いてみることをお勧めします。
大事なのは考える癖をつけることです。良いアイディア、面白いアイディアだけを考えようとすると結局発想が縮こまり、また不精癖がつきがちです。良いも悪いもとにかく考える、玉石混交の中からこそ素晴らしい物語は生まれるのです。
A2:ありえないものを考えてみましょう
もう一つは、「なるべくあり得ないもの、突拍子もないものを考えようと心がける」ことです。
そのジャンル(たとえばファンタジーとか)で一番主人公にならないのはどんなキャラクターでしょうか。一番やってはいけない展開はなんでしょうか。それをやりましょう。
その上で、「どうしたらこれが面白くなるかな」と考えましょう。そう、やりっぱなしではダメなんです。やっちゃいけないこと、あり得ないことをやった上で、どうにか面白くなる方法を探すんです。意図的に王道パターンから外れているから大変ですが、だからこそうまくアイディアがつながれば非常に面白いアイディアになります。
実際、突拍子なさすぎてどうにもならないことも多いです。しかし、先にも紹介した「玉石混交でいこう」の心構えでやらなければなりません。
たとえば、ファンタジー冒険もので考えてみましょう。勇者が魔王を倒したり、強いキャラクターがもっと強い怪物と戦ったりするのが「当たり前」ですよね。ひっくり返したら「魔王が勇者を倒す」「全然強くない一般市民の主人公」でしょうか。
意外性はありますが、単に魔王が暴虐無人な振る舞いをしたり、一般市民が何にもできず終わる話では面白くなりにくいです。ではどうしましょうか。魔王なんだけれどもっと強い敵に脅かされていたり、一般市民だけど職人の技や知識、特殊な能力で問題を解決する話にしたらどうでしょう。面白くなりそうじゃないですか?
ただ、このような意外性のあるアイディアは、ライバルも常に狙っていることを忘れてはいけません。実は先に紹介したアイディアも、いまやわりとよく見るようなものになっています。だから、皆さんは常に新しいアイディアを考え続けねばならないのです。

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。