テーマを読者にどう伝えるか

榎本秋のクリエイト忘備録

作家志望の方と話しているときにたまに思うのは、「キャラクターの不在」です。
これは書きたいテーマが強くある人に多い傾向です。
環境問題などの現代社会の諸問題をテーマとして描くときに、その問題を追いすぎるがゆえに主人公を始めとしたキャラクターが希薄になる作品をよく見ます。
小説はキャラクターの言動を読むものです。そのキャラクターが希薄化してしまうと、読者はなにを読んだらいいのかわからなくなります。

作品にはテーマが必要ですし、現代の皆さんが興味があることをテーマにすることは大事です。
しかし、テーマが主になり読者が感情移入するキャラクターが従になってしまうと、読者はなんの話を読んでいるかわからなくなることがあります。それに、「キャラクターが動かされている」を感じさせてしまうことも。これでは面白いと思ってもらえなくなります。

エンタメ小説は、まず主人公がその作品で何をなしとげるかが大事です。その主人公とテーマの間にもあまり乖離があってはいけないと思います。
主人公の気持ちになってみて、そのテーマを主人公が理解し、テーマの中で主人公が動けるかを考えてみましょう。

宗田理先生の『ぼくらの七日間戦争』はうまく両立している素晴らしい作品だと思います。

榎本秋

榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。

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