新人賞でいいところまでいった原稿にどこまで執着するか

榎本秋のクリエイト忘備録

最終選考や最終選考直前で落選した原稿をどうするか、というのはとても大きな問題だと思います。
惜しいところまでいった作品だから、他の賞に応募したら受賞するかもしれない。そういった考えが出ても不思議ではありません。

私は、プロ小説家としてやっていきたいなら、落選原稿は保留しておいて次の作品を作るべきだと思っています。
というのも、プロでやっていくなら常に新作を作らないといけないからです。 
他の賞ならいけるかも……なんて思いがあると、新作を作るモチベーションに影響が出る可能性があります。 
また、プロデビュー前のそうした惜しかった落選原稿はプロデビュー後の書き直すチャンスがいくらでもあるのです。
なので、「プロ小説家としてやっていきたい場合は落選原稿は保留すべき」と思います。

一方、「プロ小説家としてコンスタントに執筆していくよりも、思い入れのあるのこの作品を仕上げて世に出したい」
という場合はその原稿を直し、他の賞に送ってもよいと思います。

常々作家志望さんと話していて感じるのは、プロというのはたくさんの作品を企画・執筆していかないといけないということです。
そして、ボツになったり評価されなかったらそれを諦めるのも必要ということ。
執着はどうしたって先へ進む足かせになってしまいがちなのですから。 

ご自身がどう世に作品を問うていきたいかでスタンスを決めてください。

榎本秋

『ライトノベル新人賞の獲り方』著:榎本秋(総合科学出版)

榎本 秋(えのもと あき)
活字中毒の歴史好き。歴史小説とファンタジーとSFとライトノベルにどっぷりつかった青春時代を過ごし、書店員、出版社編集者を経て2007年に榎本事務所を設立。ライトノベル、時代小説、キャラ文芸のレーベル創刊に複数関わるとともに、エンタメジャンル全体や児童文学も含めて多数の新人賞の下読みや賞の運営に関わる。それらの経験をもとに、小説、ライトノベル、物語発想についてのノウハウ本を多数出版する。

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