
物語を作るということを真面目に考えていきますと、
まず前提条件になる様々な設定やキャラクター描写を丁寧に積み上げて、
と考えてしまう人のほうがおそらく多数派でしょう。
この真面目さはとてもいいことなのですが、
創作という点では足かせになることもあるんです。
どういうことでしょうか。
設定の説明や、キャラクターについてわかってもらうためのシーンは、
しばしば「物語としては退屈」ということになりがちなのです。
ミステリーにおいて、殺人が起きる前に不思議な館とか
そこにいる家族の説明とかを延々やってしまうパターンですね。
でも、一番インパクトのあるシーンは、そうじゃないですよね。
「殺人」そのものですよね。
だから、なるべく早く殺人シーンを書いて、
詳しい説明は飛ばしたり後回しにするストーリー構成が時には必要になるのです。
丁寧さ、真面目さは時に邪魔になると覚えておいてください。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。