
以前は「プロになりたければとにかく長編を書け」と言われたものですが、
最近は短編が受け入れられる余地がかなり広くなったようです。
ライトノベル系小説雑誌もありますし、なによりもウェブ小説の世界では短編も注目されれ可能性があります。
短編のいいところは、「とりあえず完成させる」ハードルが長編より低いことです。
単行本一冊分書く力がない人でも、とりあえず短編一冊分の文章を書くことはできるはずです。
えいやっと一本書けば、それは自信になります。
作品の良し悪しはそこから積み重ねていけばいいのです。
でも、意味なくただ書くだけは辛いよという人もいますよね。そこでオススメなのが「短編連作」を目指すことです。
短編を書く時、主人公を共通させたり、舞台を共通させたりしましょう。
そうすれば、一冊分集まった原稿はただの短編の塊ではありません。「短編連作」になります。
長編の新人賞に応募することだってできます。そう思えば、創作意欲も湧いてくるのではありませんか?

作品が書けるようになれば欲が出るものです。
自分の作品を読み返して「イマイチだなあ」と思うこともあるでしょう。
そんな時は次のステップに移るいいチャンスです。大体の場合、それは「ただの短編の集まりになっている」ことが多いのです。
であれば、「芯」を作ってあげればいい。全体を貫き、一体感を作る要素のことです。
例えば、主人公の成長です。短編を通して彼を成長させてあげましょう。
例えば、事件の進展です。何か大きな出来事が進んでいるのです。
例えば、起承転結です。主人公を取り巻く状況が「転」で大きく変わるのです。
とりあえず短編を書いてまとめる、とはレベルの違う難易度の作業になります。
でも、創作の腕を上げるためには欠かせない挑戦です。是非挑んでみてください。
【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。