創作基礎16:ウェブ小説って?

創作基礎

ウェブ小説の今むかし

インターネット上で小説を発表する、いわゆるウェブ小説(ネット小説)は、それこそネット黎明期には既にありました。
当初は個人サイト上で発表することが主でしたが、
やがて小説を投稿するだけでOKのサイトが登場したことで創作・購読の勢いが加速していきます。

このように創作者と読者が非常に近い関係にあるコンテンツをUGC(User Generated Content)といいます。
「ユーザーが作るコンテンツ」ということで、そのまんまですね。

ゼロ年代にはケータイ小説の大ブームがあって、美嘉『恋空―切ナイ恋物語』など多数の大ヒット作が登場しました。
ライトノベルにも、ウェブ小説出身の作家は少なからずいました。
川原礫がデビュー前に『ソード・アート・オンライン』をネット連載していたのは有名ですね。

しかし、近年はその状況が大きく変わっています。
書店の棚を見れば、文庫よりも大きなサイズで刊行された、ウェブ小説発の作品群がずらりと並んでいます。
既存のライトノベルレーベルも、ウェブ小説で人気の作品や作家を次々とラインナップするようになりました。
いまや、ウェブ小説は「将来的にプロ作家になれる可能性も結構ある趣味」として定着しつつあるのです。
今後どうなるかはわかりません。しかし、少なくともウェブ小説がいま注目されているのは間違いないのです。

ウェブ小説の特徴

では、ウェブ小説にはどんな特徴があるのでしょうか。
以下、その特徴をいくつかピックアップしてみました。

1)あくまで趣味なんだから好きに書いていい!
(プロを目指す人も目指さない人も共存しているのがウェブ小説の世界です。好きに書いて仲間ができたり、評価されたりしたら幸せですね)

2)ブーム、流行、好みは明確に存在する
(異世界転生ものを称して「なろう系」と呼ぶこともありますが、実際にはかなり激しい流行の移り変わりがあります。アンテナを立てましょう)

3)一巻できっちり終わる話より、長く続く話
(新人賞や紙の本にはボリュームの限界がありますが、ウェブ小説にはありません。長くて壮大な話を書きたい人にはウェブ小説のほうが向いているかも)

4)ウェブ小説の世界はコミュニティでもある
(書き手と読み手が混じり合いながら共存しているのがウェブ小説の世界です。
仲間との交流、批判の受け流し、そんなスキルが役に立つこともしばしば)

インターネットという新しい領域が小説と小説家にどんな影響を与えるのか、
実のところまだわかりきっていないように思います。
みなさんもこの大海原に漕ぎ出してみませんか?

【執筆者紹介】榎本海月(えのもと・くらげ)
オタク系ライター、ライトノベル編集者。榎本事務所に所属して幅広く企画、編集、執筆活動に従事。共著として『絶対誰も読まないと思う小説を書いている人はネットノベルの世界で勇者になれる。』などがある。2019年にも新刊『この一冊がプロへの道を開く!エンタメ小説の書き方』『物語づくりのための黄金パターン117』『物語づくりのための黄金パターン117 キャラクター編』(ES BOOKS)、『異世界ファンタジーの創作事典』『異中世世界創作事典』『神話と伝説の創作事典』(秀和システム)を刊行。PN暁知明として時代小説『隠密代官』(だいわ文庫)執筆。講師としては愛知県名古屋市の専門学校日本マンガ芸術学園にて講義を行い、さらにオープン参加形式で【土曜セミナー】毎月開催中。

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